2012年4月23日月曜日

ペッパー・アダムス&ジミー・ネッパー/"Pepper-Knepper"

名前が似ていることをネタにした企画かと思いきや、この二人仲がよかったのか他にも双頭バンドのアルバムがある。


低音楽器ばっかでとりあえず地味だが、なんともいえない味のある演奏。
アダムスはタンギングの切れよくゴリゴリと吹くが、ほのぼのした雰囲気の曲目、相方がトロンボーンであることの影響もあってか、全体的にゴリゴリ系ではない。

ジミー・ネッパーというトロンボニストについてはよく知らない。
ものの本を紐解くと、ミンガスバンドのアレンジャーだったときに、ミンガスに殴られて歯を折られたこともあったらしい。なんとも気の毒な話だ。
そんなエピソードを聞くと演奏者としてのレベルはいかがなものかと先入観を持ってしまうが、本作を聞くと派手ではないものの「いぶし銀」な好プレイヤーであったことがわかる。
音色はビッグバンドでいえばリード向きではないのだろうが、曲によって音色も吹き分けているし、小粋なバップフレーズに好感が持てる。
"I Didn't Know About you"のソロなんかトロンボーンらしさが出ていてとてもよい。
そのあと急にウィントン・ケリーのオルガンが唐突に出現して笑えるんだこれが。

2012年4月13日金曜日

ジョン・コルトレーン / "Transition"

なぜか紹介される機会が少ないように感じる『トランジション』。
だが、コルトレーンのアルバムの中で3本指に入る傑作と思う。


『至上の愛』と『アセンション』のちょうど中間に録音されたもの。モードからフリーに移行せんとする時期であり、本作もフリーではなくやたらとゴリゴリなモードといった雰囲気だ。
だが、そんな豆知識は聴けば簡単に吹っ飛ばされる。
表題曲「トランジション」のあまりに圧倒的な迫力。
このあたりの時期からコルトレーンの音色はさらに次の段階に達してるように思われる。
暴力的なまでに楽器が鳴り、よりエッジが立ち、密度はどんどん増していく。
疲れを知らない長尺ソロは延々と続く。一体いつまで吹く気なんだと。
そして、賛美歌のような美しさのバラッド「ディア・ロード」をはさみ、「組曲」に突入する。
これがまた何とも凄まじい。
マッコイ・タイナー、ジミー・ギャリソン、エルヴィン・ジョーンズの各ソロがつながり、怒涛のテナーソロへ流れ込む。メロディックな超絶フレーズの嵐、フラジオ、フリーキートーンを連発しオーガズムへと上り詰める。そしてごく自然にテーマへと帰着。
こんな演奏をゼロから作り上げられる人間は他にいない。
なぜコルトレーンの死後10年も経ってから発表されたのか、まったくもってけしからん。

後期コルトレーンを敬遠している方にこそ聴いて欲しい一枚だ。

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2012年4月8日日曜日

ジョン・ルーリー(ラウンジ・リザーズ)



ジョン・ルーリー率いるラウンジ・リザーズのファーストアルバムがこれ。
バンドとしては、正直上手いんだかヘタクソなんだかわからない。本人曰く「フェイク・ジャズ」だそうだ。
ともかくルーリーのアルトはヨレヨレ。楽器はあまり鳴っていない。これはどう考えてもヘタクソなんだが、本人の吹きっぷりに迷いは感じられず。アート・リンゼイの好き勝手なノイズギターとなぜか上手いことかみ合っている。
『ハーレム・ノクターン』なんか、ろくすっぽソロも吹かないしおちょくってるように聴こえるのだが、オリジナル曲に顕著に見える「計算された適当さ」みたいなものがこのバンド独自のカラーなのだろう。
フリージャズのようなハチャメチャさはなく、かといってバップのような技量至上主義でもない。微妙にロックやニューウェーブの方向に寄ったインチキ臭い安っぽさが絶妙なかっこよさを生み出している。
ジャケットはイケてないが、名盤と思う。

ちなみにルーリーは映画俳優としてもその筋では有名らしい。見たことないのでわからんが・・・。

2012年4月3日火曜日

アルバート・アイラー/"Prophecy"

『スピリチュアル・ユニティ』録音の1ヶ月前に行われたニューヨークでのライブ盤である。

ライブということもあってか、録音はかなり適当。音質はスピリチュアル・ユニティより格段に悪い。
だが、ライブだけあって演奏はなんとも生々しく、楽器を通して肉声をそのままぶちまけたような吹き方だ。
聴いていて思うのは、アイラーは色々な音色を吹き分けられるプレイヤーだったということだ。
中音域の太さは王道テナーそのもの、Ghostのテーマではまるでチェロのようにも聴こえる。この演奏をするために余程練習したのだろう。