2012年7月25日水曜日

吉沢元治・高木元輝デュオ/『深海』



山下洋輔トリオとはまた違う、重い重いフリージャズ。
これもあの時代の日本ジャズの一面なのだ。

フリージャズにありがちな中弛みなんか一切ない。聴いている側も集中していないと、パワーに気押されてしまう。
フリーに「構成」という言葉が当てはまるとは思わないが、ここぞという場面で吉沢さんのベースが唸り始め、重い旋律がテナーと重なる。
これこそがインタープレイなのだ。
高木さんはテナー、ソプラノ、バスクラと持ち替えるが、"Lonely Woman"のソプラノの音色といったら・・・。こんな音が吹ける人は他にいないだろう。
この手の音楽だと、どうしてもサックスの絶叫に耳がいってしまう。
ここでも高木さんの唸り声と楽器の音が半々くらいになったりして凄まじいのだが、サブトーンで吹いたときにすごくいい音が出てくる。サックス吹きとしてはこういうところを聴き逃したくない。
と思っていると、バスクラの後ろでベースがふっと消え、フルートと思しき鋭い音が刺さってくる。二人だけの演奏・・・ってことは吉沢さんがフルートを吹いているのか!?と気がついたときはちょっと嬉しかった。

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2012年7月19日木曜日

オディーン・ポープ サクソフォン・クワイア/"Locked&Loaded Live At Blue Note"

これはヤバイです。


オディーン・ポープのサックス・クワイアというのは、テナー5人、アルト3人、バリトン1人にリズムセクションという、なんとも笑ってしまうようなバンドだ。
そこにマイケル・ブレッカー、ジョー・ロバーノ、ジェームス・カーターがゲスト出演するという、はっきり言ってバカなんじゃないかというライブである。

全体を通してともかく暑苦しい。
ポープの趣味なのだろうか、クワイアのレギュラーメンバーもバチバチのパワー系奏者を揃えているので、美しいメロディーの曲でもやはり暑苦しい。
が、そこが好き者には堪えられないだろう。

ゲストは皆お約束通りのスーパープレイを聴かせてくれるが、ともかくブレッカーのソロが頭おかしい。
2曲目のソロで好き放題に吹きまくり、聴いているほうは頭がカッカ来る。
ところが後にさらにスゴイ"Coltrane Time"が控えている。ポープとブレッカーのバトルなんだが、うるさいうるさい。「お、そう来るか。じゃこうだ!」とオラオラ。「あ?ほいじゃ俺はこうだ!」とオラオラ。
聴いていて思うのだが、ブレッカーはリーダー作よりも客演の方が圧倒的によい。ヨアヒム・キューンのアルバムでもそうだが、周りを気にせず存分に暴れまくる。自分がプロデューサーだと気にすることが多くて暴走できないんだろうか・・・。他人の作品だからワーワーできるというのもどうかと思うが、格好よきゃいいんだ格好よきゃ。

2012年7月7日土曜日

マーチンのバリトンサックス/ネック延長作戦

大した参考にならないが、今日は楽器のお話。
私のバリトンサックスは"The Martin"と呼ばれるやつで、Low B♭までしかない。
機種に共通かどうかはわからんが、楽器としての特徴は
・音色は比較的柔らかいが、太い。
・操作性はテーブルキー以外はまずまず。
といったところである。

ただ、致命的な欠点があった。
全体的に音程が高いのである。

これはどうやら古い時代のバリトンに共通した症状のようだ。その昔、コーンやらマーチンやらが活躍していた時代にはチェンバーがやたらとでかい、モコモコしたサウンドのするマウスピースしかなかったのだ。それに合わせて楽器の設計をした結果、こういう事態になったらしい。
ネックに1cmくらいしかマッピが刺さらないと、吹いたときに安定しない。さらにネックとの接触面積が小さすぎると振動が管体に効率よく伝わらない。フルパワーで吹いても、どうもグリップできない感じになってしまう。

そこで、思い切ってネックを1.5cm延長することにした。
ネックのマウスピース接続側に同じ口径の真鍮パイプをハンダ付けし、つなげた部分の上から薄い真鍮の板を巻いて補強するというものだ。
リペア屋のオジサン曰く、1.5cm程度なら、テーパーをかけなくても影響はないだろうとのこと。

清水の舞台からダイブする気でやってみたのだが、吹奏感は抜群によくなった。振動が無駄なく伝わる感覚があって、余計なストレスを感じずに済む。
上手くいかなかった場合でもハンダ付けなので、原状回復は可能。

結果的には正解だったようだが、ただでさえ長いネックがさらに長くなってしまった。
吹いているとき楽器がやたら遠い。

古い時代のバリトンを好んで使う人は少ないだろうが、お悩みの方は試してみてはいかがでしょうか?

2012年7月1日日曜日

ライヴ・フロム・サウンドスケイプ/"Hell's Kitchen"


学生時代、アングラ感のにじみ出たジャケに惹かれて何も知らずに買ったのだが、これが大当たり。
ニューヨークのライブハウス「サウンドスケイプ」でのライブをオムニバスにしたものだが、尖ったロフトジャズが詰まっていて、とにかく大満足であった。
DIWにはこういうのを出して欲しい!デヴィッド・マレイの駄作やグロスマンの変なスタンダード集なんか出している場合じゃないのだ。

まずオディーン・ポープ・トリオにやられる。
重機関銃のようなリズムセクションにポープの強靭なテナーが乗っかる。でもって抜群にかっこいいテーマのモードが展開。ヘヴィロックのライブを聴いているようだ。
次にブロッツマン・トリオが出てきて、デビュー以来ずーっと同じスタイルのブギョブギョを撒き散らす。このオッサン本当に変わらないw。

そして、エド・ブラックウェルとチャールズ・ブラッキーンのデュオ。これには驚いた。
ドラムとテナーの二人でロフトジャズと来ればどんだけメチャクチャな演奏なのかと期待したが、よい意味で裏切られた。曲が綺麗なのだ。
コード楽器やベースがいないのに、曲の流れが見える。フリージャズにありがちな中だるみがない。しかもテナーの音色、唄い方がすごくいい。

このあとにドン・チェリーが洞窟の中で演奏した録音というのが入っているんだが、ラッパは吹いておらず、フルートをやっている。バックには地下水の滴る音がやたら入っている。
うーん、これはどうなんでしょうか・・・。空間系というかなんというか、うーん・・・。

以上