テナーマンとして有名なズート・シムズだが、
実はソプラノサックスの名手でもあるのだ。
同じクール派のテナーの中でもスタン・ゲッツのように華のあるタイプではなかったが、レスター・ヤング直系のひたすらスイングしまくるスタイルを貫いた。
本作の録音は1976年。
フュージョンの足音が聴こえてきそうな時代に、50年代の録音かと思うような選曲と演奏を選択したのも、ズートならではといえるのではなかろうか。
1曲目"Someday Sweetheart"はディキシー時代の古い曲。
一緒に口ずさみたくなる親しみやすいテーマがたまらん!
よく聴くと低音域ではサブトーンを吹き、コードトーンで駆け上ったキメの高音域では張りのある音になる。
このあたりの音色のコントロールは見事だ。
4曲目"Bloos For Louise"は愛妻のために書いたズートのオリジナルだそうだが、古いスタイルのブルースをソプラノで吹くというのがかえって新鮮。
ズート・シムズのソプラノは温かみのある音だが、これといった真新しいものはない。
シドニー・ベシェのように強烈なヴィブラートを使うわけでもないし、コルトレーンのような攻撃性もない。
だが、それがポイントなのだとも思う。
ソプラノのような高音域の楽器はコントロールがどうしても難しくなるので、口や喉をリラックスさせた状態で自然な音を出し、楽器を鳴らすという、当たり前のことがより重要になるような気がしてくるのだ。
ソプラノサックスの音源ならこいういうのをオススメしたい。
某ケニーなんぞ聴いたって仕方ない。
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