「TスクウェアのTruth」だろうか。「夜霧に咽ぶムードテナー」というのもあるだろう。
とりあえず、ジャズ・ポップスの花形楽器のひとつというイメージは一般大衆の中では確立しており、正にその通りとも言える。
しかし、そんなイメージを徹底的に破壊し尽す、恐ろしく暴力的なサックスがある。
ニューヨークアンダーグラウンドの雄として、カルト的な人気を誇るノイズバンド、
ボルビトマグースである。
ボルビトマグースである。
メロディー、ハーモニー、一定のリズムを持ったものを音楽と定義つけるのであれば、彼らの演奏はおよそ音楽と呼べる代物ではない。
圧倒的な轟音と獰猛なサックス。これは「音楽」ではなく、むしろ「行為」というべきであろう。
圧倒的な轟音と獰猛なサックス。これは「音楽」ではなく、むしろ「行為」というべきであろう。
79年結成。
ドン・ディートリッヒ(sax)、ジム・ソウター(sax)、ドナルド・ミラー(guitar)の3人組からなる(活動初期はエレクトロニクス担当がいたが、現在は3人である)。
その演奏は超爆音・超轟音であり、JOJO広重をして「最もうるさいバンド」と言わしめた。
フリージャズやロックとも全く異なる。
その演奏は超爆音・超轟音であり、JOJO広重をして「最もうるさいバンド」と言わしめた。
フリージャズやロックとも全く異なる。
左から、Donald Miller(Gt)、Don Dietrich(sax)、Jim Sauter(sax)
<ボルビトマグースの意味とは>
紀元400年代中頃にフン族(北方の匈奴の一派と思われる)がローマ帝国の一部を侵略した。
その際にケルト系ローマ人の町が襲われ、虐殺されたらしい。そのとき被害を被った町のひとつが「ボルビトマグース」という名前だったようである。
バンド名にコレを採用した理由はまったく不明。
この際わからなくたっていいのである。
ライブで発射される音塊の破壊力はすさまじく、客は聴覚に異常をきたし、ライブ後しばらく会話ができなくなったそうだ。
ライブハウスのスピーカーを吹っ飛ばしたという伝説も残している。
そのパフォーマンスも常軌を逸している。
マウスピースとネックの間を長いホースでつなぎ、サックス本体をエレキギターのように振り回しながら吹きまくるゴムホース・サックス(勝手に命名)。
ここまで来ると、音程もへったくれもない。
アドルフ・サックスもあの世でさぞ驚いていることだろう。
まだある笑。
2本のサックスのベルでマイクをはさみ、一気に爆音を撒き散らす
必殺技ベル・トゥゲザー(Bell Together)。
もはや何がなんだかわからない。
音階や理論なんざクソ食らえとでも言わんばかりのその有様からは、サックスという楽器の更なる可能性すら感じる。
96年6月、渋谷ラママでの歴史的ライブ。聴くべし!
多くの人がフリージャズやノイズは受け入れがたいものと感じるだろう。楽器を正しく演奏できない人が滅茶苦茶やっているだけ、という見方もできる。
特にボルビトマグースのような「行為」は極めて破壊的だ。
しかし、私を含め一部の人には熱狂的な支持を受けているのも事実である。なぜなのか。
特にボルビトマグースのような「行為」は極めて破壊的だ。
しかし、私を含め一部の人には熱狂的な支持を受けているのも事実である。なぜなのか。
その根底にあるのは「破壊衝動」
ではなかろうか。
必死で作ってきたものをぶち壊してしまいたいという、ある種のカタルシスを求める感覚というものは誰しも少なからず持っている。
そうした衝動を、演奏者が音という形をとって自分の代わりに体現してくれているというように感じる、言い換えれば
「代償行為」
に当たると考えることはできまいか。
少々飛躍しすぎかもしれないが、少なくともフリー系のライブを聞きに行くとき、私の中にはそのようなものが流れているような気がする。
ではなかろうか。
必死で作ってきたものをぶち壊してしまいたいという、ある種のカタルシスを求める感覚というものは誰しも少なからず持っている。
そうした衝動を、演奏者が音という形をとって自分の代わりに体現してくれているというように感じる、言い換えれば
「代償行為」
に当たると考えることはできまいか。
少々飛躍しすぎかもしれないが、少なくともフリー系のライブを聞きに行くとき、私の中にはそのようなものが流れているような気がする。
さて、読者のみなさんはいかがでしょう?
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