テナーサックスにはホンカーという部族(?)がある。
他には
「スクリーマー(絶叫する奴)」
「ブロー・テナー(吹き散らすテナーサックス」
より広い意味では「テキサス・テナー」
などと呼ばれたりもする。
←ホンカーの代表格の一人、ビッグ・ジェイ・マクニーリー。
客を興奮のるつぼに叩き込む、圧倒的におバカなパフォーマンスが最高だ。
要はブリブリギョエーと吹きまくるテナー族のことだ。
ブルースの派生系ともいえるジャンルで、ロックンロールにつながるようなスタイルの曲が多い。
当時のダンス・ミュージックのひとつといえるだろう。
しかし、「ブロー・テナー」という名称はあるが、
「ブロー・アルト」という言葉は聞いたことがない。
ビッグ・ジェイ・マクニーリー、イリノイ・ジャケー、エディ・ロックジョウ・デイヴィス、アーネット・コブ、ハル・シンガー、ジミー・フォレスト、キング・カーティス、、ジョー・ヒューストン、ジュニア・ウォーカー・・・。
みんなテナー奏者なのだ。
ホンカーはテナーの専売特許なのか?その理由は何なのか?
楽器の特徴から考えてみた。
<なぜサックスなのか>
そもそもなぜサックスにしかホンカーはいないのか?
ホンカーと言われる部類にはサックス吹きしかいない。というか、サックス吹き以外にはホンカーと呼ばれる名前は付かない。
理由を考えてみたが、ポイントのひとつは自由度の大きさ
にあるように思う。
サックスはトランペット、トロンボーンなどの金管楽器と比べて、非常に肉声的な音がする楽器である。技術があれば息の音と聞き間違うようなサブトーンから、虫の鳴き声のような怪しい音までカバーが可能だ。
逆に言うと、自由度が高い分適当な楽器とも言えるが。
それに対して、金管楽器は良くも悪くも「金管の音」しか出ない。
歴史が古いこともあり、楽器としても完成されているので、適当さが入る余地が少ないと思われる。
<なぜテナーサックスなのか>
では、ブロー・テナーしかいないのはなぜなのか?
ここで、演奏者の吹き方を考えてみたい。
レスター・ヤングは楽器を横向きにして吹くし、ビッグ・ジェイ・マクニーリーに至ってはブリッジしながら「オギョー」と吹く。
対してアルトでは、ほとんどの人が楽器をガシッと構えて動かず吹く。
映像を見る限りチャーリー・パーカーもあまり動かないし、キャノンボールはU字管が腹にめり込んで固定されている(まあこれは冗談)。
つまるところ、
テナーサックスはいい加減さが味として受け入れられる楽器なのだ。
音域がアルトより低いことも影響し、吹き損じや音の揺れが「そういうプレイなのだ」と捉えられやすい。
ジャズテナーというジャンルが確立すると同時に、そういった演奏がテナーのスタイルのひとつである、と聴衆に認識されたのだ。
よって、多少メチャクチャにやっても許される(笑)。
反面、アルトで同じことをやると悲惨なことになる。
単なるヘタクソ、しかも聞くに堪えないヘタクソな演奏になってしまう(俺は身をもって体験した)。
さらには、ホンカーが吹くジャンプ・ブルースのような曲では、フロントでソロを取るテナーはヴォーカルの役割も務める。
客をノリノリにさせなくてはならない。
そのためには、ある程度メチャクチャをやっても許容される楽器であったほうが都合がよかったのかもしれない。
ガツンと低音も出せれば、絶叫のフラジオも出せるテナーは格好の道具だったのではないか。
<ホンカー名盤紹介>
さてさて、あれこれ書いてみたが、魅惑のホンカー・ワールドを知るには聴いてみるのが一番だ。
最近はジャンプ・ブルース系の音楽は流行らない。
ホンカースタイルでテナーを吹く人などほとんど見かけない。
だが、いい加減でおバカで底抜けに明るい音楽もまた格別にいいものだ。
■Honkers &Bar Walkers Vol.1
ホンカーのコンピ盤。
内容は比較的おとなしいが、ジミー・フォレストの名曲"Night Train"も入っていて、入門用(?)としては最適と思う。
■Recorded Live At Cisco's / Big Jay Mcneely
ホンカーバカ一代男、ビッグ・ジェイ・マクニーリーの熱気あふれるライブ盤。
「ヒーヒーヒィイイ~」とフラジオをキメまくり、お客さんは大喜び。
絶叫サックスだけでなく、オルガンが何気に渋い。
■Live At Fillmore West / King Curtis
説明不要の歴史的名盤。
ミスター・ホンカーであるキング・カーティスによる怒涛のライブ録音である。
"Menphis Soul Stew"や"Changes"など、ソウルの名曲を堪能できる。
コレを聴かずしてブラック・ミュージックは語れない!
2 件のコメント:
初めまして。
テナーをやってます。
Morris Laneっていう人をご存知ですか?
ライオネルハンプトンのバンドにいた人でシングルの寄せ集めのアルバム1枚しか見つからないんですが、笑っちゃうくらい音が太くてなんだかかわいいくらいです。
コメントありがとうございます!
Morris Laneは小生まったく知らなかったのでググッてみたところこんなのがでてきました。
http://www.amazon.co.jp/Tenor-Saxman-Morris-Lane/dp/B0009UBSOS/ref=ntt_mus_ep_dpi_1
貴重な情報ありがとうございます!!
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