2010年10月28日木曜日

フレデリック・クロンクヴィスト(As)/"Maintain!"

最近注目しているスウェーデンのアルト奏者、フレデリック・クロンクヴィストである。


汁もしたたる黒人ジャズばかり聴いていたので、北欧ジャズは正直あまりカバーしていなかったが、ふと手に取ったこのCD、
かなり熱い。


ずしっと重たい芯のあるアルト。

ボッサのリズムに乗せた、どことなく寂しさを感じさせるメロディーの6曲目”North African Pearl”など、音の特徴をはっきり聴くことができる。

テーマ明けのソロから一気にギアを上げる2曲目は、ソロ・曲調ともにケニー・ギャレットの影響を感じるが、これはこれでよしとしよう。



私見だが、基本的にジャズは

アホな音楽

である。
「ケツの穴(よーするに肛門)」が語源という噂もあながち嘘ではないと思っており、ともかく「ガッハッハ!」と笑えるところにかっこよさがある。

ただ、この人のアルバム全体に漂う、なんともいえない透明感も、これまたすごくいい。
独特の透明感とソリッドなアルトを、でしゃばり過ぎないリズムセクションが裏打ちする。
オススメです。

■Personel
Fredrik Kronkvist (As)
Daniel Tilling (P)
Martin Sjostedt (Ba)
Daniel Fredriksson (Ds)

2010年10月19日火曜日

International Baritone saxophone Conspiracy

って、なんじゃらほい。

直訳すると、
「国際的バリトンサックスの陰謀」。
なんじゃそら笑。

チャールズ・パパソフというオッサン名義のバリトンサックスアンサンブルである。



ニヤリ






このパパソフなる人は何者かというと、サックス奏者、役者、作曲家など複数の顔を持つマルチアーティスト。

スパルタとペルシアの殺し合い映画『300(スリーハンドレッド)』にも出ているらしい(!)。何の役かはわからんが…。



超B級超大作映画『300』。
ペルシア兵を斬ってえぐって大騒ぎ。
結構おもしろかったよ。







で、肝心のCDだが、バンドの編成は

バリトンサックス6本のみ(!)


という異色の録音である。

無理矢理ジャンル分けすればフリージャズになるのだろうが、完全なフリーフォームではなく、むしろ現代音楽に近い。

全員がフリーインプロで吹いたかと思ったら、クラシックのような美しい和音のテーマが突然提示されたりと、飽きさせない。

8曲目にはミンガスの直立猿人なんかも入っている。

彼女(もしくは彼氏)と部屋でくつろぎながら聴くには



まったくオススメしない



が、「バリトンサックスってこんなこともできるのか!」と思わせる、実に面白いCDである。


どう?欲しくなったでしょう!!?



※ちなみにメンバーには俺の大好きなハミエット・ブルーイット先生が。

関連記事
ハミエット・ブルーイット(バリトンサックス)

それでは!次回をお楽しみに。

2010年10月14日木曜日

マーク・グロス(As)

この人の音は本当にすばらしい。
アルトもソプラノも、全音域で力みがまったく感じられない。
オラオラーっとエキサイトして吹いているときも、音が自然なのだ。普段呼吸するように楽器を吹いている。これは本当にすごいことであると思う。
どこで読んだか忘れてしまったが、マーク・グロスのアンブシュアは極めて合理的な形をしていることで有名だそうだ。
日本での知名度はあまり高くないようだが、ビッグバンドのパーソネルを見ていると結構出てくる。デイブホランド・ビッグバンドのアルトもこの人だ。

本作は1枚目のリーダーアルバム。
12分にもおよぶ「チャーリー・パーカー組曲」は、目まぐるしく展開するパーカーメドレーが仮装大賞みたいで思わず笑ってしまう(ついにはボーカルまで入って来る。なんだそれ)。
超速スイングあり、バラードありで飽きさせない。これはアタリだった。現代版バップの隠れ名盤といえるだろう。
現在、デューク・エリントン・オーケストラのアルトを務めているようだ。フルバンドでの音も是非聴いてみたい。
そういや、エリントン・オーケストラのリーダーって今誰だっけ?まあいいか…。


関連記事
デイブ・ホランド・ビッグバンド/"What Goes Around"

2010年10月5日火曜日

私の好きなジャッキー・マクリーンのレコード

音楽を聴く側からにしても演奏する側からにしても、楽器が「上手い」に越したことはない。

しかし、テクニックのある「上手い」演奏が必ずしも聴衆の心を捉えるとは限らないわけである。



「どちらかといえば下手」
だが
「抜群にかっこいい」
プレイヤー。

私の中のその代表格が、ジャッキー・マクリーンである。


早いパッセージでは指の回りはイマイチだし、何しろ音程が悪い。


それでもなお、マクリーンの演奏が我々を捉えて離さないのはなぜなのか。

「哀愁漂うトーン」だの、「訛りとも言うべきプレイ」だの、使い古されたマクリーン評を書くつもりはない。そんなものが読みたければそこらへんの雑誌にいくらでも載っている。



私が魅力を感じる理由はただひとつ。
音に男気を感じるからだ。

「少々音程が悪かろうが、俺はこう演る!」と言わんばかりの、堂々とした吹きっぷり。
パーカーのフォロワーと呼ばれながら、一聴してマクリーンだと認識させる、独特のリズム感と音遣い。
そういう演奏は、難しく考えすぎのテクニシャンが吹いたものよりも感動がある。

とはいえ、御託を並べてもしょうがない。とりあえず私的オススメを3枚挙げたので、とにかく聴いてみて欲しい↓。

①“Swing,Swang,Swingin”

マクリーン入門用
としてよく挙げられる一枚。
オリジナル曲による構成が多いブルーノート時代には珍しくスタンダード中心の選曲で、マクリーンのアルトが素直に聞けるアルバムでもある。
相変わらず音程は悪いが…。



②“Right Now!!”

比較的複雑なテーマの曲が多いが、全体的にまとまっている好アルバム。
夭逝したエリック・ドルフィにささげた2曲目が泣かせる。

音程の悪さも相まって、男気全開である。

ブロマイドみたいな写真を使わず、文字だけドン!と置いたジャケットにも男らしさを感じる。
アルバムタイトルは、訳すと「今だ、おりゃあ!!」ってか。



③“Demon’s Dance”

ぶっ飛んでるジャケットが印象的な、ブルーノート時代最後の録音。
4曲目の”Sweet Love Of Mine”はジャズ史に残る名演として名高い。
なるほど、ボッサのリズムにのせてテーマが始まった瞬間から伝わる緊張感と高揚感はたまらんのである。
この1曲聴くだけでも、このCDは買う価値ありだ。
ウディ・ショウとのコンビが聴けるという点でも貴重。


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ジャズアルトのひとつの時代を築いた彼も、2006年3月31日に亡くなってしまった。
一度はライブを見に行きたかった…。
今後も当ブログではマクリーン名盤を紹介していく予定である。

しかしまあ、この音程の悪さはもう少しどうにかならんのか。


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