電気サックスを吹いてみた変なのもあるし、晩年はさすがに音がヨレヨレになってくる。だが、やっぱりバップスタイルを貫いているのだ。
スタンダードや正統派ブルースなどを選び、湧き出るバップフレーズを吹きまくって一丁上がり。ほとんど金太郎飴である。
それは芸がないわけでは決してない。
歌モノではしっとりとテーマを聴かせ、ファストスイングでは饒舌なフレーズをいくらでも吹く。その型が飽きられなかったからこそ、100作を軽く超える作品を生み出せたのだ。アッパレとしか言いようがない。
本作はテナーは吹かず、アルト一本。
音色はパンチがあり、いかにもバップ向きだが、バラードを吹くとこれがまたたまらないのだ。
"It Might AsWell Be Spring"は、まずテーマが素晴らしい。女性ヴォーカルが歌い上げるような吹き方だ。
そして、手に汗握る超速Cherokee。高速テンポで演奏することが多いこの曲だが、とんでもないスピードで演奏されている。さすがのスティット先生もテンポについて行けない場面が散見され、1小節中の音符の数が足りなかったり、フレーズが収まりきらなかったりしている。
だが、驚嘆すべきはこの速度でも聴き手が歌えるバップフレーズが止め処なく溢れてくることだ。しかも、休みなく吹き続ける技量。
「吹き倒す」とは、まさにこのことだ。
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