『スピリチュアル・ユニティ』録音の1ヶ月前に行われたニューヨークでのライブ盤である。
ライブということもあってか、録音はかなり適当。音質はスピリチュアル・ユニティより格段に悪い。
だが、ライブだけあって演奏はなんとも生々しく、楽器を通して肉声をそのままぶちまけたような吹き方だ。
聴いていて思うのは、アイラーは色々な音色を吹き分けられるプレイヤーだったということだ。
中音域の太さは王道テナーそのもの、Ghostのテーマではまるでチェロのようにも聴こえる。この演奏をするために余程練習したのだろう。
言うまでもないが、アイラーの音楽は圧倒的に好みが分かれる。
そりゃそうだ。これだけ既存の音楽理論から逸脱すれば仕方ない。このライブでも拍手はまばらで、観客の「なんじゃこりゃ」という当惑がありありと見て取れる。
しかし、アイラーのフリージャズに余計な難解さはない。明るいのだ。
黒人霊歌が根底にあるためか、そもそも何故それを取り入れようと思ったのかわからないが、「聖霊ジャズ」とでも呼ぶべきテナーには「人間への賛歌」があるように感じられる。黒人にとってはまだまだ受難の時代であったわけだから矛盾しているようにも思えるが・・・。
余談だが、このライブの1ヶ月後に『スピリチュアル・ユニティ』が録音され、同年秋にはジャズの10月革命が発生した。そして12月にはコルトレーンの不朽の名盤『至上の愛』が吹き込まれる。
歴史を知った上であとから薀蓄を垂れることはいくらでもできる。それでもなお、"Prophecy"(予言)というタイトルは来るべき時代の大波を予言していたと思えてならないのだ。
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