2008年8月15日金曜日

ジェームス・カーター


ご無沙汰!

最近暑い!こんな暑い日はパワーで押すアヴァンなジャズを聴くに限る。
というわけで、今回は巷で噂(?)のジェームス・カーター特集だ。




ほう、なかなかイケメンじゃないっすか。カーターさん。










ソニー・ロリンズをして、最も注目すべき若手プレイヤーと言わしめた男。

サックスという楽器で可能なあらゆる奏法をマスターしているキ○ガイのようなプレイヤーだ。こと特殊奏法の技量は現代最高峰だと思う。

3オクターブを超えるフラジオ、フリークトーン、ファズトーン、スラップタンギング、フラッター、サーキュレイションブレスから名前のない理解不能な怪しい音まで何でもござれだ。
それでいて、単なるキワモノではない。レスター・ヤングやコールマン・ホーキンスの影響を受けつつ、モダンジャズの主流を着実に歩んでいる。
バラッドを吹かせれば弦楽器のような美しい音まで出しちまうんだから、聴いている側は「ずるいぞ、この野郎!」と叫ぶしかなくなる。
まあ、「ジャズ・テナーはスタン・ゲッツしか認めません。」みたいなファンには受けないだろうが、フリーのにおいが混ざったパワー系プレイヤーが大好きな私にとってはバッチリストライクゾーンなのである。
じゃあ、何から聴けばいいの?というそこの君!とりあえず以下紹介する音源を聴いてくれ。どれもアマゾンで買えるので、下記のリンクから注文して私の収益に貢献して欲しい(笑)。
"Out Of Nowhere"

バリトン・サックス好きなら是非聴くべき音源だ。
ウネるオルガンが実に心地よい。特に3曲目”High Jack”がかっこよい。なにしろハミエット・ブルーイット御大とカーターの2バリトンがブギョブギョ吹くんだから、もーたまらん。
"KC After Dark"by Kansas City Band

映画のサントラなのだがバカにできない。なにしろ参加してるミュージシャンがすごいことになっている。
カーターのソロでヤバいのは3曲目”Indiana”。ジャズのスタンダードをデキシー風にやるのだが、カーターはとびきり熱いブロウを聴かせてくれる。
"Jurassic Classics"

とりあえずここらへんから聴いてみるのもいいかも。超速Aトレである。しかも汽車の汽笛をテナーのオーバートーンで再現(笑)するというキ○ガイぶり。

"Chasin’ The Gypsy"

ジャンゴ・ラインハルトの曲を取り上げたアルバム。
ジプシー独特の哀愁に満ちた美しい旋律を、現代の解釈で再構築したといったところか。
バスサックスやFメゾサックス(!)の音をじっくり聴けるという点でも、これは買いだ。
レジーナ・カーターのバイオリンもいい味を出している。
"Gardenias For Lady Day"

ビリー・ホリデイの追悼盤として吹き込まれたもの。
ホリデイと来ればやはり聴くべきは5曲目”Strange Fruit”だろう。「奇妙な果実」という邦題でも有名なスタンダードだが、この曲名の由来はリンチによって殺され、木から吊るされた黒人の死体から来ているのだ。
カーターのサックスはこれでもかというくらいに咆哮し、差別・迫害された挙句殺されてしまった人々の怒り、悲しみを見事に表現している。


トレンチコートにバリトンサックス!
あんた男だぜ。

 

2008年2月17日日曜日

下品でナンボ!ホンカー特集

「ホンカーって、あれでしょ?ブリブリブギョーみたいなの。ああいうのはキライ。」なんてことぬかしてジャズファン気取ってるOL連中に喝!

というわけで、今回はホンカーについて。



ビッグ・ジェイ:「ほれほれ~、ブギョ~」


白人の客:「はうあ~!やめれ~!」







実はホンカーという言葉は結構マイナーで、タフ・テナーもしくはテキサス・テナーなんて呼び方が多かったりする。

彼らの共通項としては、「グロウル奏法」というのがある。
「う~」と唸りながら楽器を吹くことで、「ブキャー」とか「ギョエー」とかいう音が出るのである。どこの誰が始めたのかわからんが、とりあえず40年代に発生したらしい。

イリノイ・ジャケーは「レスター・ヤングに習ったよ。」と言っていたらしいが、真偽のほどは不明。



で、どんなやつがいるのかというと、

とりあえずビッグ・ジェイ・マクニーリーは必聴だ!
ホンカーといえばまずこの人!演奏の凄さは言うに及ばず、その他で変なエピソードがたくさんあるので、紹介してみる。


<立って吹かない>
昔のライブの写真を見ると、ちゃんと立って吹いていないものの方が多い。
ステージに寝転がってモゾモゾ動いてみたり、ウンチングスタイルで吹いてみたり、バーカウンターの上を歩いたりしている。
ちなみにホンカーはバー・ウォーカー(Bar Walker)なんて呼ばれることもあるが、語源はここら辺から来てるのかもしれん。








<曲が長い>
1曲1時間なんてのはよくあったらしい。まあ、この手の音楽は今でいうところのクラブカルチャーみたいなものだったかもしれんし、客も聴きに来るというよりは踊りに来る感じであったろうと思う。しかし、1時間てのはなぁ・・・。

ひどいときはドラムのソロをとらせている間に楽屋に戻り、弁当を食っていたらしい。で、ようやくステージに戻ってみたら、客は疲れ果ててみんな帰ってたとか。


<蛍光サックス(?)>蛍光塗料をサックス本体に塗りたくり、白い手袋をはめる。で、ソロをとりながら暗いステージに出てくると、光るサックスが宙に浮いているように見えるというわけ。


客は狂喜した(?)だろうが、楽器に変なもの塗るなよ!もう!







<演奏してるとパクられる>
ライブ中にノリノリになって客席を練り歩きながらソロを吹いていたところ、そのまま外に出てしまい、戻ればいいのにそのまま道端で吹きまくってたら警察にパクられてしまった。


とまあ、とにかく色んな意味で凄い人なのだ。
サックス、特にテナーやってる人は聴かなくてはならないぞ!


ここまで書いたら疲れてしまった。その他のホンカーも紹介しようと思ったのに・・・。
とりあえず今日はここまで!

☆次回をお楽しみに☆


2008年2月10日日曜日

バリトンサックス垂れ流し

これまでアルトだけを吹いてきたが、学校から勝手に拝借した楽器でステージに立ったときからバリトンの魅力に取り付かれた。しかし、この楽器は特に初心者からは敬遠されがちである。それには以下の理由が考えられる。

・ まず、姿が異様。やたらとグネグネ曲がった管体がグロテスク。
・ やたらでかい。しかも重い。
・ 低音しか出ない。=サンボーンとかをイメージしている新入生にとっては期待はずれ以外の何ものでもない。

こんなところだろう。
しかし、ファンクバンドで、コンボで、ビッグバンドで、ひとたびバリトンを思い切り吹いたなら、病み付きになること請け合いである。というか、
かっこいいと思わない人に用はないのである


ステファン・クプカ

とりあえずわかりやすいとこから行くとして、まずはTower Of Powerだろう。
これを持ってないというのはすごくまずい!!今すぐ買うべき名盤ぞろいだ。
ファンクでバリトンといえばTOP、クプカ様をおいて他になし!


ジェリー・マリガン

ジャズで聴くなら、マリガンは外せないだろう。この人がいなかったら、バリトンサックスがソロ楽器としてここまでの地位を確立することはなかっただろう、というほどの偉人である。重い楽器をまるでテナーのように軽快に操り、音は柔らかい。俺の好きなパワー系とは正反対だが、初めて『Night Lights』を聴いたときは衝撃だった。



ハリー・カーネイ

ビッグバンドでのバリトンを語る上での最重要人物といえばエリントン楽団のハリー・カーネイをおいて他になし。
エリントンが亡くなるまで一度も5番の席を明け渡すことのなかったおっさんで「番頭」なんて呼ばれたりもした。「尊敬するバリトン奏者は誰?」との問いに対し、現役で活動する数多のプロバリトン奏者の実に8割以上がハリー・カーネイの名をあげるという(帝国データバンク調べ)。
そこの君!「ハリー・カーネイ知らない」じゃすまされんぞ!!

※『Moods For Girl And Boy』ではストリングスをバックに朗々と吹き上げており、エリントンバンドとは一味違ったカーネイを聴くことができる。俺はわりと好き。




ペッパー・アダムス

なんだか公務員みたいな顔だが、強靭な音を出すペッパー・アダムス。
彼がスタン・ケントン楽団を辞めた直後、ケントンは穴埋めのために2人のバリトンを雇っていたという逸話が残るほどである。パワー系プレイヤーが好きなら避けては通れない!!聴くべし。



レオ・パーカー

レオ・パーカーはR&Bやゴスペルのにおいがプンプンするバリトンである。テクニックではペッパー・アダムスのほうが一枚上手という印象だが、ニヤリとさせられるフレーズが満載で、聴いていて実に心地よい。しかもソロでは大暴れすることもしばしば。極めていい感じである。


サージ・チャロフ

チャーリー・パーカーの影響をもっとも受けたバリトンといえばサージ・チャーロフだろう。ウディ・ハーマンで有名なFour Brothersのバリトンはこの人が吹いている。バンドでこの曲をやるならチャーロフになりきってひたすらコピーせよ!これを読んだ以上、やるしかねぇぞ!
ソロでも何枚かアルバムを出しているが、俺は『Boston Blow Up』のBody And Soulが好きだ。


<関連記事はコチラ>
サージ・チャロフ/Blue Serge


ここまで書いてみたんだが、疲れた。
次回に続くということで勘弁してくれ。

2008年1月22日火曜日

センチな気分になってみるか・・・~バラッド特集~

誰にでもバラードが聴きたくなるときがある。仕事の帰り道、恋人と別れたとき、飲み会の途中にトイレで爆睡してしまった時etc・・・。
というわけで、今回はサックスのバラード名盤を探してみよう。



Phil Woods『Warm Woods』2曲目の「Easy Living」は多くのプレイヤーが演奏しているスタンダードナンバーだが、中でもこれは別格の名演である。「アルト奏者は必ず聴かなければならない!」と叫びたくもなる。
一発録りのアドリブでどうやったらこんなメロディックなフレーズが作れるのか・・・。素晴らしいの一言に尽きる。
他にも「In Your Own Sweet Way」や「Squire’s Parlor」など、名演いっぱい。完成度が極めて高いアルバムである。





Steve Grossman 『Bouncing With Mr. A.T.』何はともあれ聴くべきは「Soul Train」だろう。本家コルトレーンを超える演奏であると思う。カデンツァのようなソロ以外は曲中ではメロディーを淡々と吹くのみでアドリブをほとんどとらないところが憎い!柔らかいが密度の濃い音で、一音一音をすごく丁寧に吹いている(と思われる)。
男は黙ってグロスマン。これである。





Gene Ammons 『Good Bye』
ボステナーの異名をとる名手アモンズの遺作。図らずもGood Byeという題がついてしまったのは偶然であろうか。
本来書くべきは表題曲なんだろうが、ここではあえて2曲目。
なんとポップスの名曲
「Alone Again」
をやっているのだ!
クレジットだけ読むと、ここでギルバート・オサリバンかよ!!と叫びたくなるが、誰もが口ずさむメロディーもアモンズの手にかかるとこんなネチネチとしたジャズに仕上がってしまう。
クサさ丸出しの演奏でもアモンズが吹くと不思議とかっこいいのである。74年死去。



 
David Murray 『Lovers』
そのものズバリ、バラードばっかやってるアルバム。
フリージャズのおっさんだからといってブギョブギョやってるだけと思ったら大間違い。とりあえず「In A Sentimental Mood」から聴いとこう。出だしの一音目から「おおおおーっ!」となること請け合い。私が女だったら間違いなく惚れている。






Hamiet Bluiett 『With Eyes Wide Open』
私が3度の飯より好きなバリトン奏者。この人もフリーやロフトで有名なのだが、なにしろ音が太いもんだから特にスローな曲では圧倒的に強い。2曲目の「Sing Me A Song Everlasting」のメロディーは一度聴いたら忘れられない。やはり低音楽器はバラードが似合う!


なんというか、どれも名盤ばっかでマニアックさが足りなかったか・・・。まあ今回は入門編ということで夜露死苦!

2008年1月2日水曜日

新年一発目:よい音とは何でしょう?

あけましておめでとうございます。
新しい年の始まりとともに、一旦リセットして初心に戻ってみようかと。というわけで、新年一発目は「音」について。

音は個性である。ゆえに、絶対的なただひとつの答えはない。

クラシックの世界ではパーカーの音は好まれないだろうし、例えばフリージャズではわざとヘロヘロの音を出したりすることだってある。
極論をいえば何だっていいのだ。
金属的なバキバキ系だろうが、木管的なやわらかい音だろうが、どうだっていいのである。

ただ、一応の答えというか、

よい音のストライクゾーン

のようなものはあると思う。それは「楽器が鳴ること」と「説得力のある音」の2点に集約される。

※ここからの具体的な話については、私個人の独学によるものではなく、レッスンで教えられた内容の一部抜粋、つまり受け売りである。また、音質等については私の好みが多分に反映されているので、その点ご了承いただきたい。



① 楽器が鳴ること
音を改善するにはアンブッシュアが極めて重要だが、これについては回を改める。
楽器を鳴らす上で重要な他の要素としては、息の量とスピードがあると思う。

楽器というものは一定量以上の息を吹きこまなければ鳴らない。そこで、第1ステップでは息をたくさん入れることに体を慣らすことが重要である。

しかし、息の量を多くするだけではコントロールが利かない。むやみやたらに鳴らそうとすると、いわゆるオーバーブローの状態になってしまうこともある。この傾向は独学で楽器を始めた人に多く、私は今でも悩まされている。

というわけで、第2ステップでは、息のスピードを速めることを考える。


具体的には、マウスピースのボアの中心を、
針の穴を通すようなイメージ
で細く狙ってみる。
この練習を繰り返すことで、楽器を鳴らしつつ余裕を持って演奏することができるようになるはずである。


デイブ・リーブマンの教本。
楽器と身体のコントロールに関しては最も勉強になる本だ。



② 説得力のある音
 科学的に分析したわけではないが、音には「重心」のようなものがあると思う。つまり、高音域、低音域どちらの倍音が多く含まれるかという違いである。
 
そして、低音域の倍音が多く含まれるほうが、倍音の範囲(レンジとでもいうのか)が広がり、結果的に豊かな響きを持つ説得力のある音に近づくのではないかと考えられる。
 
ここでも当然のごとくアンブシュアが大きく影響するが、

息の方向

も重要なポイントである。
具体的には、リードに直接息をぶつけるように吹くのである。垂直に真下に「吹き下げる」イメージがかなり重要らしい。

ためしに、下あごを突き出すようにして(本来は絶対にやるべきでないが)マウスピースの上部に向かって吹き上げるようにして音を出してみよう。
前者と比べて、何か重心が上にあるような、薄っぺらな音が出てはいないだろうか。
音の重心はあくまで低く!


これはジャズ・サックスにおいては
音の基本がサブトーン
であるということとも無関係ではあるまい。これについては佐藤達也氏もどこぞの雑誌に書いていた記憶がある。

サブトーンについてはここでは省略するが、より低音域を強調する方向に説得力ある音の答えがあるのでは、と考えている(というか、そう教えられている)。
以上の内容は、基本的にすべてのサックスに共通して言えることである。 


サブトーンといえば、ベン・ウェブスターは外せないだろう。
楽器が鳴っていると通り越して、ほとんど息の音しか聴こえない(笑)。



繰り返すが、いい音を出すための答えはひとつではない。また、複数の要素が互いに影響し合っており、どこかを改善すればそれで完成というわけにはいかない。
ここに書いたことが正しいか間違っているかは実際に試してみたあと、皆様自身の感覚で判断していただきたい。


※かなり偉そうなことを書いてしまいましたが、「じゃあやってみろ」といわれても困っちゃいます・・・。
毎回レッスンではツッコまれまくってるし。実践してやろうという方はちゃんとした講師の先生に金を払って習いましょう!