2011年11月4日金曜日

10,000Hit記念! ペーター・ブロッツマン・トリオ / "For Adolphe Sax"

「サックス界のヘラクレス」(?)という、よくわからない異名をつけられた、ドイツの轟音サックス奏者ペーター・ブロッツマン。
本作は1967年録音、ブロッツマンの処女作である。
サックスの開発者アドルフ・サックスに捧げるというタイトルだが、当のサックス氏がコレを聴いたら腰を抜かすだろう。「俺の作った楽器をこんな使い方しちゃうのかよ・・・。」てな具合に。


↑ブロッツマンは自身のレコードのジャケットアートを自ら製作しているという。美大出身なので得意だったのだろうか。このジャケも単純かつ地味だが、曲の世界観をそのまま映しているように思う。

誰が言い出したんだか知らん「ヘラクレス」などという異名は安っぽいにもほどがある。
が、玉石混交、数多のプレイヤーがひしめくフリー・ミュージック界において、屹立する巨人であることに間違いはなかろう。

フリージャズのサックス奏者にはキチガイのようなテクニックを持っている人が多い。エヴァン・パーカーなどは循環呼吸を駆使して延々と音を繰り出すし、現代音楽に見られる重音奏法などもある。
だが、ブロッツマンはそういった特殊テクニックをほとんど使わない。フラジオやフリーキートーンは出すが、サックスの通常の音だけで勝負している。

だが、その音の重さ、狂乱ぶりたるや半端ではない。得体の知れない獣の唸り声のような音がサックスから噴き出す。
ライブを見に行ったこともあるが、会場の壁が振動するようであった。

また、ペーター・コヴァルドのベースがいい味を出している。アルコ弾きでギャギャギャッと音を連射したかと思えば、静かに不協和音を並べる。いい具合に聴衆を不安にさせる。

曲はフリー・インプロヴィゼイションが基本で、決まったテーマなどはない。ある程度の構成譜があるのか、その場の空気を読みあっての演奏なのかわからないが、相手の音に即座に反応した「会話」みたいなものが大きい流れを作っているように聞こえる。
バップなどのいわゆる「ジャズの語法」を無視、出したい音を好き放題に出すという、これぞフリー・ミュージックという演奏だ。
スカッとして実に気分がいい。

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