2011年12月31日土曜日

阿部薫 / "Overhang Party"



若くして亡くなったアーティストは、死後神格化されることが多い。死ぬことによって伝説が完成されるのだろう。
阿部薫も当然そうなった。謎めいた言葉や語り草になったエピソードは山のように紹介されている。伝説の大安売りなわけだ。
そういう話を知ってからレコードを聴くと勝手な先入観で、いいと思っていなくても素晴らしいとか思い込んでしまうのだから厄介なのだ。
だが、それを差し引いても、阿部薫のアルトはすさまじい。


初めて阿部薫を聴いたのは高校時代と思う。
ジャズライフか何かに「破壊的ですらあるサックスが云々」と書いてあって、つまらない内容だったら金が無駄だななどと思いつつ怖いもの見たさでCDを買ったのだった。

よくわからなかったが、「綺麗で冷たい音」というのが第一印象だ。それは今も結局変わらない。
山下洋輔トリオなどと違って、聴いていてちっとも楽しい気分にならない。いいところでイェイ!なんて口にする気にもならない。余計な悲壮感はないが、やたらと切羽詰っているように聞こえる。
「終わりの音楽」だ、などと思ってしまう。
が、そんな感慨も「神格化された阿部薫」のイメージに影響された若造の戯言なのだろう。

だが、上手く説明できないがともかく心の琴線に触れる。
しんどいので年に1~2回しかレコードに針を落とさないが、たまに無性に聴きたくなるというような…。阿部薫のアルトはそんな音だ。

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