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2012年9月9日日曜日

ライブ・アット 騒(GAYA)を読む ~阿部薫の命日に寄せて~

 かつて渋谷区初台にフリージャズ・ミュージシャンが集まるライブハウスがあった。
その名は『騒(GAYA)』。
 本書はオーナーであった騒恵美子による証言集だ。
 当時出演したミュージシャンや常連客との交流を主軸に、店を開いた理由、そして自分は何者であったのかという自身への問いかけにつながっていく。
 多くのミュージシャンが登場する中で、特に力を入れて描かれているのは、阿部薫、鈴木いづみと重なった、短くも強烈な時間についてだ。

 

 阿部薫の伝説は語り尽くされている。
 最近こそあまり見なくなったが、1960~70年代の日本ジャズ、アングラムーブメントについて書かれた本や雑誌のバックナンバーを読むと、阿部薫と鈴木いづみのエピソードはたびたび取り上げられている。傍若無人でキチガイじみた振る舞い。約束をすっぽかし、鈴木いづみを殴り、命を削ってサックスを吹き、音の伝説を残したままクスリであの世に逝ってしまったと。
 だが、騒恵美子の目には、律儀で繊細な男と映っていたようだ。本当は人間が好きなのに人間嫌いを装い、繊細すぎるために世の中と上手く折り合っていけない男。
 それがいつしか伝説のサックス奏者として祭り上げられ、本人も後戻りできなくなったのではないのかと、平易で直球の文章で描かれている。
 長い時間心の底に沈殿していたものが一気に解放されたように、騒恵美子の文章は続いていく。
 中でも特に印象的な部分を引用してみる。

「二人は音を残し、文章を残したことで、肉体をもって生きたあの時期に出会った人だけでなく、肉体が滅びた後、遅れてきた人の間でも生き続けられる永遠の命を持ってしまったということだ。」

 この「持ってしまった」、という一文にすべてが集約されている。
音源がCD化されたことは私のような遅れてきたファンにとっては望ましいことではあるけれども、それは死によって伝説が完成されたことも証明している。
だが、こんなやるせないことがあるだろうか。
 亡くなった人のことを、しかも知り合いでも何でもない人をどうこう言うのはよろしくない。
 が、生きて楽器を吹き続けてこそ、その長い道程に意味があるのではないか。
その音楽が永遠の命を持つのは、ずっと後でよかったのではないか。
 しかしこうも思う。レコードを通じてさえ伝わって来るあの研ぎ澄まされたアルトの音は、あの人にしか出せなかったのかもしれない、と。

 本書にはミュージシャンや批評家が阿部薫について書いた文章とは違う側面が書かれており、記録としても大変貴重である。と同時に、本書は著者の遺作でもあったのだ。
 騒恵美子も2011年10月に癌で亡くなった。
日本ジャズの動乱期を知る人が、また一人いなくなってしまった。無念である。

(敬称略)



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阿部薫 / "Overhang Party"
吉沢元治・高木元輝デュオ/『深海』

2012年8月14日火曜日

John Coltrane / "OM"


A面B面通じて1曲な上に、この呪術的なジャケット。
ビビッてなかなか手が出なかった一枚だが、聴いてびっくり。大変気に入った。

冒頭はメンバー全員による詩(?)の朗読から始まる。True Actionがどうたらと言っているがまったく聞き取れない。チベット死者の書からの引用と聞いたことがあるが・・・、ともかくよくわからん。
変なライナーより対訳をつけてくれりゃいいのに。
続いて問題の「オーム、オーム」が始まり(「オーム」というのはインド諸宗教で瞑想などに使われる聖音らしい)、怪しい土台が出来上がったところでコルトレーンがフルトーンで吹き始める。
この音色の強靭なことといったらもう。楽器がぶっ壊れるんじゃないかと思うくらいである。
ファラオ・サンダース十八番のギョエギョエが絡まり、アフリカンドラムが交じり合い、ジョー・ブラジルのフルートが突き刺さり、B面はもはやジャズのフォームではなくなっている。インドや東洋の要素を混ぜ込んだ国籍不明のカオス状態だ。
こういった精神感応ミュージックは嫌いな人にとっては勘弁してくれ状態なのだろうが、私は純粋にかっこいいと思う。サックスプレイヤーとしては参考になる部分は少ない。というかほとんどないのだが、なぜかまた最初から聴きたくなってしまう。
スピーカーの前に陣取り、爆音で聴きたいアルバムだ。
 
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ジョン・コルトレーン / "Transition"
ルイ・ベロジナス(Ts) / "Live At Tonic"

2012年8月10日金曜日

イーヴォ・ペレルマン "Mind Games"


イーヴォって何人かと思ったらブラジル人のオッサンだった。
何はともあれ、まず音色がいい。
ラバーのマッピの音ではあるが、音色が独特なのだ。
たっぷりとしたローの土台にハイが乗っかっていて、なおかつ独特のジャリッとした倍音が多く含まれている。常にオーバートーンが基本にあるような音だ。

テナー、ドラム、ベースのトリオだが、演奏自体はデュオに近い。
パーカッション的なドラムをバックにペレルマンが延々とソロを吹く場面が多いのだが、正直最初はダレてるなぁと思うところもあった。
が、ちょっと我慢して(笑)注意深く聴いていると、次々に違ったフレーズが湧き出て飽きが来ない。というか次第に脳がトランス状態になってきて気持ちいい。
これは!と思う調性が薄い浮遊感のあるフレーズも連発され、コピー意欲をそそられる。
この種のフレーズは「このコード進行に使えるからコピー!」ではなく「コピーしてみたが、さてどんな進行に使えるかいな?」と考えるのが楽しいタイプのものだ(ヘタクソな言葉遣いだがニュアンスはわかっていただけるかと)。

これは買って大正解。

2012年7月25日水曜日

吉沢元治・高木元輝デュオ/『深海』



山下洋輔トリオとはまた違う、重い重いフリージャズ。
これもあの時代の日本ジャズの一面なのだ。

フリージャズにありがちな中弛みなんか一切ない。聴いている側も集中していないと、パワーに気押されてしまう。
フリーに「構成」という言葉が当てはまるとは思わないが、ここぞという場面で吉沢さんのベースが唸り始め、重い旋律がテナーと重なる。
これこそがインタープレイなのだ。
高木さんはテナー、ソプラノ、バスクラと持ち替えるが、"Lonely Woman"のソプラノの音色といったら・・・。こんな音が吹ける人は他にいないだろう。
この手の音楽だと、どうしてもサックスの絶叫に耳がいってしまう。
ここでも高木さんの唸り声と楽器の音が半々くらいになったりして凄まじいのだが、サブトーンで吹いたときにすごくいい音が出てくる。サックス吹きとしてはこういうところを聴き逃したくない。
と思っていると、バスクラの後ろでベースがふっと消え、フルートと思しき鋭い音が刺さってくる。二人だけの演奏・・・ってことは吉沢さんがフルートを吹いているのか!?と気がついたときはちょっと嬉しかった。

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阿部薫 / "Overhang Party"

2012年7月1日日曜日

ライヴ・フロム・サウンドスケイプ/"Hell's Kitchen"


学生時代、アングラ感のにじみ出たジャケに惹かれて何も知らずに買ったのだが、これが大当たり。
ニューヨークのライブハウス「サウンドスケイプ」でのライブをオムニバスにしたものだが、尖ったロフトジャズが詰まっていて、とにかく大満足であった。
DIWにはこういうのを出して欲しい!デヴィッド・マレイの駄作やグロスマンの変なスタンダード集なんか出している場合じゃないのだ。

まずオディーン・ポープ・トリオにやられる。
重機関銃のようなリズムセクションにポープの強靭なテナーが乗っかる。でもって抜群にかっこいいテーマのモードが展開。ヘヴィロックのライブを聴いているようだ。
次にブロッツマン・トリオが出てきて、デビュー以来ずーっと同じスタイルのブギョブギョを撒き散らす。このオッサン本当に変わらないw。

そして、エド・ブラックウェルとチャールズ・ブラッキーンのデュオ。これには驚いた。
ドラムとテナーの二人でロフトジャズと来ればどんだけメチャクチャな演奏なのかと期待したが、よい意味で裏切られた。曲が綺麗なのだ。
コード楽器やベースがいないのに、曲の流れが見える。フリージャズにありがちな中だるみがない。しかもテナーの音色、唄い方がすごくいい。

このあとにドン・チェリーが洞窟の中で演奏した録音というのが入っているんだが、ラッパは吹いておらず、フルートをやっている。バックには地下水の滴る音がやたら入っている。
うーん、これはどうなんでしょうか・・・。空間系というかなんというか、うーん・・・。

以上

2012年6月13日水曜日

ジョン・ゾーン/"Naked City"



機械のような正確な演奏技術で、ピーキーで安っぽくやたらかっこいい音楽をやる。
初めてネイキッド・シティを聴いたときは衝撃的だった。

改めて聴いてみると、ジョン・ゾーンはサックス奏者としてはバップが根底にあるのだなとつくづく思う。「ギョエェェエェー!ケケケケッ」というのがゾーン節なのはもちろんだが、ノーマルな曲調になったときのソロなんかもうバップそのものだ(しかしあの「ケケケケッ」ってどうやればできるんだろうか・・・。やりたいんだが)。

さて、アルバムについてだが、フリー系の音楽は多くの場合ライブが圧倒的によい。
しかし、ネイキッド・シティについてはスタジオ録音のほうが断然疾走感がある。
ライブ盤には山塚アイが参加していないことも大きいだろうが・・・。スタジオ盤を聴きなれていると「ここだ!」というところでアイの絶叫が入らないと物足りないのだ。
とはいえライブ盤では各曲の尺は長めなので、フリゼールのぶち切れソロやゾーンのアルトを心ゆくまで堪能できる。"Inside Straight"の循環呼吸アルトソロは圧巻。まだいくのか!?とスピーカーの前で身を乗り出したくなる。

※スタジオとライブでは、やってる曲はほとんど同じ。比べるにはもってこいである。

2012年5月12日土曜日

チャーリー・ヘイデン / "Liberation Music Orchestra"



ヘイデンが反戦思想から本作を作ったらしいが、正直どうでもよい。
音楽のバックグラウンドを知ることでより深く理解できることに異論はない。この音源が録音されたのは1969年。米国はベトナムを爆撃しまくり、ウッドストックでフェスが開かれた時期だ。こうした時代背景からすれば、ふむふむと納得できる部分はある。
が、最初から知識だけ仕入れることは不要と思う。まず音を聴くべきだ。
反戦ということを音楽が表現し得るのか、という問いはほとんど禅問答であり、正直議論してもあまり意味ない。
ところが、反戦思想から生まれた名曲で云々というディスクレビューなんか読むと、なんとなく理解した気になって他人のどうでもいい意見をさも自分の意見のようにしてしゃべりたくなったりするのだから厄介だ。
まず聴いてみて、そこからどう思うか、やはりこれは反戦の歌なのだと捉えるか、各自で考えればよかろう。
大事なのは音楽自体に押してくるようなパワーがあるかどうか、ではないか。

いろいろグチャグチャ書いてしまったが、ともかくこのオーケストラの音楽は単純にかっこいい。カーラ・ブレイの、混沌の中に美しさが現れるアレンジ。よくもまあこういう曲を書けるものだ。
映画のサントラをそのままバッキングに使っている箇所などは好みの分かれるところだろうが、ナマ楽器の肉声を譜面で統制しつつ、自由にもやらせるというのは実に痺れる。
サックス好きとしては、レッドマンの豪腕を振り回す如きテナーだけでも一聴の価値はある。

2012年4月8日日曜日

ジョン・ルーリー(ラウンジ・リザーズ)



ジョン・ルーリー率いるラウンジ・リザーズのファーストアルバムがこれ。
バンドとしては、正直上手いんだかヘタクソなんだかわからない。本人曰く「フェイク・ジャズ」だそうだ。
ともかくルーリーのアルトはヨレヨレ。楽器はあまり鳴っていない。これはどう考えてもヘタクソなんだが、本人の吹きっぷりに迷いは感じられず。アート・リンゼイの好き勝手なノイズギターとなぜか上手いことかみ合っている。
『ハーレム・ノクターン』なんか、ろくすっぽソロも吹かないしおちょくってるように聴こえるのだが、オリジナル曲に顕著に見える「計算された適当さ」みたいなものがこのバンド独自のカラーなのだろう。
フリージャズのようなハチャメチャさはなく、かといってバップのような技量至上主義でもない。微妙にロックやニューウェーブの方向に寄ったインチキ臭い安っぽさが絶妙なかっこよさを生み出している。
ジャケットはイケてないが、名盤と思う。

ちなみにルーリーは映画俳優としてもその筋では有名らしい。見たことないのでわからんが・・・。

2012年4月3日火曜日

アルバート・アイラー/"Prophecy"

『スピリチュアル・ユニティ』録音の1ヶ月前に行われたニューヨークでのライブ盤である。

ライブということもあってか、録音はかなり適当。音質はスピリチュアル・ユニティより格段に悪い。
だが、ライブだけあって演奏はなんとも生々しく、楽器を通して肉声をそのままぶちまけたような吹き方だ。
聴いていて思うのは、アイラーは色々な音色を吹き分けられるプレイヤーだったということだ。
中音域の太さは王道テナーそのもの、Ghostのテーマではまるでチェロのようにも聴こえる。この演奏をするために余程練習したのだろう。

2012年3月24日土曜日

ルイ・ベロジナス(Ts) / "Live At Tonic"

ルイ・ベロジナス(Louie Belogenis)のライブ盤。
コルトレーンアイラーに強く影響を受けているプレイヤーで、他にも『メディテイションズ』とか『ベルズ』(まんまじゃん・・・)というアルバムを出している。
実はジョン・ゾーンの勉強仲間でもあったらしい。


2012年3月20日火曜日

ジョン・サーマン/ "The Trio"

「問題児ジョン・サーマン」というタイトルでバリトンサックス。買わないわけにはいかない。

英国フリージャズサックスの雄、ジョン・サーマンの名作『ザ・トリオ』である。
メンバーは
ジョン・サーマン(Bs,Ss,B-cl)、
バール・フィリップス(Ba)
スチュー・マーティン(Ds)。

フリージャズではあるが完全なフリーインプロヴィゼーションではなく、各曲にはやたらとかっこいいテーマが提示される。
バリトンで演ったプログレと言ったほうが適切か。




CDで2枚組み。一気に聴くのはしんどいかと思いきや、まったく飽きない。

2012年2月10日金曜日

片山広明 / "そーかなあ"

まったく何て音を出すんだこの人は・・・。

酔いどれモンスター・テナー、片山広明さんである。









タイトルからして人を喰っている。『そーかなあ』、どーかなあ、とでも言えというのか(笑)。

個人的には渋さ知らズでの演奏よりも、少人数グループの片山さんの方が好みだ。
男気溢れる重量級テナーサウンドを思い切り浴びたいではないか。

古澤良治郎(ドラム)、望月英明(ベース)、加藤崇之(ギター)というパワフルなリズムセクションに乗ってテナーが暴れまくる。
フリージャズ独特の難解さはなく、うるさくてデタラメで最高に楽しい「片山ワールド」に引き込まれる。

2012年2月4日土曜日

フリージャズ大祭 "インスピレーション&パワー14"

昭和48年(1973年)、2週間にわたって新宿で行われた前衛・実験音楽の祭典。14日間のうち8グループの演奏を編集・収録したドキュメント録音である。



反体制運動の陰りとともに、日本フリージャズの勢いも衰えが見え始めた時期であったらしい。
このままジリ貧になる流れを打開すべく、副島輝人氏の呼びかけによってこのフリージャズ祭りは催された。
収録されたグループは以下の通り。
宮間利之とニュー・ハード
吉沢元治ベースソロ
沖至クインテット
ナウ・ミュージック・アンサンブル
富樫雅彦・佐藤允彦デュオ
高柳昌行ニュー・ディレクション・フォー・ジ・アーツ
がらん堂
山下洋輔トリオ

2011年12月31日土曜日

阿部薫 / "Overhang Party"



若くして亡くなったアーティストは、死後神格化されることが多い。死ぬことによって伝説が完成されるのだろう。
阿部薫も当然そうなった。謎めいた言葉や語り草になったエピソードは山のように紹介されている。伝説の大安売りなわけだ。
そういう話を知ってからレコードを聴くと勝手な先入観で、いいと思っていなくても素晴らしいとか思い込んでしまうのだから厄介なのだ。
だが、それを差し引いても、阿部薫のアルトはすさまじい。

2011年11月4日金曜日

10,000Hit記念! ペーター・ブロッツマン・トリオ / "For Adolphe Sax"

「サックス界のヘラクレス」(?)という、よくわからない異名をつけられた、ドイツの轟音サックス奏者ペーター・ブロッツマン。
本作は1967年録音、ブロッツマンの処女作である。
サックスの開発者アドルフ・サックスに捧げるというタイトルだが、当のサックス氏がコレを聴いたら腰を抜かすだろう。「俺の作った楽器をこんな使い方しちゃうのかよ・・・。」てな具合に。


↑ブロッツマンは自身のレコードのジャケットアートを自ら製作しているという。美大出身なので得意だったのだろうか。このジャケも単純かつ地味だが、曲の世界観をそのまま映しているように思う。

誰が言い出したんだか知らん「ヘラクレス」などという異名は安っぽいにもほどがある。
が、玉石混交、数多のプレイヤーがひしめくフリー・ミュージック界において、屹立する巨人であることに間違いはなかろう。

2011年8月22日月曜日

フレッド・アンダーソン&DKVトリオ

前回に引き続きしつこくシカゴ派、フレッド・アンダーソンである。



※ディスク・ユ?オンなどで探せば700円くらいで買える。間違ってもam?zonのやたらと高い出品に手を出さないように(そんな人いないか・・・)。
本作はシカゴを根城にする前衛サックス奏者ケン・ヴァンダーマーク率いるDKVトリオとの共演モノだ。
フロントが前衛サックス2本、ベースがケント・レスラー、ドラムはおなじみハミッド・ドレイクと来れば買わないわけにはいかない。

2011年8月17日水曜日

フレッド・アンダーソン(Ts) / "On The Run"

シカゴ前衛ジャズの重鎮フレッド・アンダーソン(Ts)が、自身の経営するジャズクラブ"Velvet Lounge"で行ったライブ録音。




80歳を迎えても衰えるどころかブリブリ吹きまくっていた前衛ジジイであったが、2010年ついに亡くなった。悔やまる死である。

さて、本アルバムのメンバーは
青木達幸(b)、ハミッド・ドレイク(ds)。

アンダーソンがもっとも好むトリオ編成による演奏だ。
フリージャズ、前衛ジャズに分類されるが(というか、モロそうなんだが)、よくあるフリーのサックスのようにキーキーとフリーキー・トーンを吹きまくるということはない。
逞しくも深い音色。何度か聴いていると同じようなフレーズがちらほら出てくるが細かいことは気にしない。
ギャーギャーやかましくすればフリージャズになると思っているやつにこういう録音を聴けと言いたい。 "Smooth Velvet"のうねるテナー、空気を感じつつ音を重ねていくベースとドラム。たまらなく最高である。
「型」が少ない分だけ、却って不自由になってしまうことも多い。何度も聴きたくなるフリージャズというのは案外少ないものなのである。

余談だが、シカゴのサックスとくればジーン・アモンズは当然出てくる。
同じテナーということもあり、アンダーソンもよくアモンズと比較されるが、ライナーノーツやら雑誌やらでたまに見かける「アモンズのような引き締まった音」という表現は
まったく意味がわからない。 時期によりけりとはいえ、どう聴いてもアンダーソンのほうがむしろ音はふくよかでやわらかいのだ。
一体何を聴いているんだと問い詰めたくなる。

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2011年6月11日土曜日

追悼 金井英人/アランフェス協奏曲

今回はサックスの話はあまり出てこないので悪しからず。


日本ジャズの牽引者であったベーシスト、金井英人さんが4月8日に亡くなった。
不覚にも、亡くなっていたとは知らなかった。
享年79歳。
悔やまれる死である。

1960年代初期、高柳昌行、富樫雅彦らとともに「新世紀音楽研究所」を旗揚げ。独自の音楽を作るために注力し、日本における前衛のさきがけとなった。
※ここらへんの状況は「日本フリージャズ史」(副島輝人著)に詳しい。

今回ご紹介するのは、金井英人クインテットにより1978年に録音された名盤
『アランフェス協奏曲』である。

※中古屋で探せば当然こんなに高くないので心配いりません。オリジナル盤じゃあるまいし。

これはもう圧倒的だ。
アランフェスの美しいメロディーをテナー2本でドラマチックに提示しつつ、不気味で荒々しいベースの重低音が後ろで鳴っている。
憎い演出だな、というのが第一印象だ。
サックス2本のうち、特に藤原幹典のアルトはすごい音を出している。
鳴りきったラバーのマウスピース独特の、柔らかくもピーキーな音だ。メタルじゃこうはいかないんだな。
藤原氏はこのとき若干20歳(!)。しかも楽器を始めて3年程度だったらしいが、にわかには信じ難い。10年以上楽器を吹いているこっちの立場がない。
尖った若手を集めて自由にやらせつつ統率し、「自分のアランフェス」を作り上げた金井氏は、ベーシストとしてだけでなくアレンジャーやバンドリーダーとしても非凡であったのだろう。

こういうジャズをやる人は最近いないな、売れないからかな、などとレコードを聴きながらひとりごちるのである。
(以上、敬称略)
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2011年6月7日火曜日

思い出のアーチー・シェップ/"Attica Blues"

部活でサックスを始めた高校1年生のとき、何かの雑誌で「アーチー・シェップが素晴らしい」と書いてあったのを読んで地元の図書館で"Attica Blues"を借りた。

今から思えば、シェップのCDが図書館に置いてあること自体笑える。

誰かリクエストしたんだろうか・・・。





ともかく聴いてみたところ、スピーカーから流れ出したのは
ドロドロファンクとグチャグチャジャズのシチュー
みたいな、とんでもないものであった。
当時私が持っていたサックスのCDはキャンディー・ダルファーとサンボーンだったわけだから、それはそれはおったまげた。
と同時に、「こんなわけのわからん音楽が二度と聴くまい」と思ったわけです。

さて、時は過ぎて今改めて聴いてみると
これがまたとんでもなくかっこいいと感じるのだから困ってしまう。
アーチー・シェップは「フリージャズの闘士」と呼ばれた時代もあり、敬遠してしまう方も多いかもしれないが、この盤に関してはあまり心配要らない。

本作は、アッティカ刑務所での暴動で多数の黒人囚人が殺された事件を元に作られたそうだが、シェップの作品の多くに人種差別への怒りがあるのは言うまでもない。
この時代の多くの黒人ミュージシャンがそうであったように、根底に流れる思想は
「ブラック・イズ・ビューティフル」
そのものだ。
が、ここでは詳述は割愛させていただく。
詳しく知りたい方は、ジャズ批評のバックナンバーでも探したほうがよりわかるはずだ。

話を戻そう。

ともかく、このレコードはフリージャズというより、インチキ臭いファンクといった方が近いだろう。
なぜこういったフォーマットを用いたのかは定かではないが、このインチキ具合がまたかっこいいのだから困ってしまう。
70年代の泥臭いファンクとシェップ独特の呪術的なリズム。
それを演奏するのはヴォーカル、ホーンセクション、ストリングスまで混ぜた30人以上の大バンド。

Pファンクにも通じる真っ黒なノリだが、意外(というのは失礼だが)調和がとれている。
印象がガラッと変わる6曲目はサッチモの追悼曲。
美しいストリングスをバックに、ソリッドな音色のソプラノを吹きまくるシェップが非常に印象的だ。

ただし、趣旨のわからんフェイド・アウトでの終わらせ方はどうにかして欲しかった・・・(笑


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2011年5月28日土曜日

ハミエット・ブルーイット/"Dangerously Suite"

直訳すれば「危険な組曲」。
ハミエット・ブルーイットでこのタイトルとくれば、どんだけ前衛かと思いきや、



アフロ・アメリカン・パワー全開のブラック・ミュージックなのである。

フリーキー・トーン連射のフリージャズではなく、アフリカをバックグラウンドにした、「いわゆる黒人音楽」がこのアルバムの主題だ。



アイリーン・ダッチャーという女性ヴォーカルが唄う"Ballad Of  Eddie Jefferson"では、ヴォーカルに絡むバリトンサックスが、これまた実にいい。
 アフリカ語(すいません、どこの言葉かさっぱりわからんので・・・)と思しき謎の語りが入る曲まで出てくる。
5曲目"Blues For Atlanta Georgia"は古いスタイルのブルースだが、
珍しいアルト・クラリネットを吹く。
瑞々しいクラの音色は相変わらず素晴らしく、何しろ音程がいい(爆笑)。

さらに、バリトンを存分に吹きまくる"Doll Baby"もB.Bキングの時代を思わせるブルースだ。
最低音を使った、ちょっと笑ってしまうような泥臭いテーマが始まった瞬間、思わず「おおっ、かっけ~!」と叫んでしまう。
フリーキー・トーンも当然使うし、いわゆる「普通のジャズ」はほとんど演奏しないが、ブルーイットが最も得意とするのはブルースとバラッドなのだと、再確認させられる。
地味だが、アタリな一枚だ。
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ハミエット・ブルーイット(バリトンサックス)
International Baritone saxophone Conspiracy