2009年9月25日金曜日

ジャケ買いしようぜ!!

前回のアーネット・コブ特集はどうも人気がなかったらしいので、今回は少々大衆向け(?)の内容にしてみた。
というわけで!
今回はジャケ買い特集だ。

ジャケ買い:レコード、CDのジャケットに惹かれて購入することの意(広辞苑)
ジャケ買いをしたことがある:音楽ファン1,000人中953人がYES(帝国データバンク調べ)

皆さんは「ジャケ買い」をしたことはあるだろうか。私も結構やってしまう。
場合によっては「嘘だろっ!」っていうような駄盤に当たってしまうこともあるが、まあギャンブルみたいなものだからしょうがない。
というわけで、今回は私がこれまで経験した「ジャケ買い」の一部をご紹介しよう。
内容についても多少触れるので、興味を持った方はamazonのリンクをクリック!!

Wayne Shorter “Phantom Navigator”

夕日に燃える空に浮かぶ巨大な客船。それを浜辺から眺める少年の姿がシルエットとなって美しい。
ウェイン・ショーターの有名盤。このジャケットはご存知の方も多いのではなかろうか。
アルバム自体はショーター本人が15歳のときに書いたSF漫画(なんだそりゃ)がコンセプトになっているらしい。
ショーターのソプラノが一直線の音になっていてとても心地よい。
リズムは打ち込みを多用している。当時としては斬新だったのかもしれないが、私としては生バンドでやって欲しかった。
1986年録音。
オススメ度:☆☆☆☆★

Richie Kamuca / Bill Holman “West coast Jazz In Hifi”
夕日のさす波打ち際に楽器が・・・というジャケットが綺麗だなと思って購入(安易ではあるが気にしない)。
オクテット形式での演奏なのだが、とりあえず面子がハンパない。ロッソリーノ大先生(tb)、ビル・ホルマン(bs)、そしてリッチー・カミューカ(ts)!
ウェスト・コースト派の中でも特に一目置かれていたというカミューカのテナーはとても紳士的で、俺が女だったらコロッといくだろうなぁ、という感じである。
オススメ度:☆☆☆☆★

“Indo Jazz Fusions”
見るからに怪しいナゾのレコード。
ジャケットにヒンドゥー文字と思しきものが書いてあるが、よく見れば単に
アルファベットをそれ風に書いてるだけ。
しかも「インドジャズ」なら”Indian Jazz”と書くべきだろうに、こともあろうか”Indo Jazz”。
Indoってなによ笑。
この適当な感じが妙に気に入り、思わず購入。
1曲目から聴いてみると、インドというか何というか、ビミョーに無国籍な雰囲気が。
で、2曲目は同じフレーズをシタールでひたすらループ。完全にドラッグミュージックになってます。
しかし、アマゾンで検索してびっくり。
なんとミュージックランキングで10万位くらいになっている!
以外に聴いてる人多いのか・・・。
オススメ度:☆☆☆★★



Brew Moore “The Brew Moore Quartet and Quintet”
これをジャケ買いした当時は精神的に病んでいたかもしれない、というようなすさまじいジャケット。ベルセルクにこういう使徒がいたような・・・。
見ればわかる(笑)!他には何も語るまい!
※ 演奏自体はどうかというと、ジャケットからは想像もつかないような柔らかく太いテナーサウンドが楽しめる。しかも、猛烈にスイングする。最高!
アルバムの詳細はまた今度。
オススメ度:☆☆☆☆☆



このように、結構アタリを引くことも多いジャケ買い。
みなさんも試してみては?

2009年9月16日水曜日

男たるものこうでなくっちゃ ~アーネット・コブ~

「男のテナー」と来れば、デクスター・ゴードン、ジーン・アモンズが筆頭に上がりそうだが、今回紹介するのははアーネット・コブ(Arnett Cobb)である。


演奏もさることながら、そもそも見た目のインパクトがハンパではない








「お前はアルト吹きなのにまたテナーかよ!」という罵声が飛んできそうだが、表現の自由なので気にしない。
日本国内での知名度はいまいちのようだが、私はとても好きだ。
ジャズファンの中ではコブはホンカーとして位置付けられることが多いが、私の持論では、
コブはホンカーではない(!!)。

※ 「ホンカーってそもそも何よ?」という方は、ブログのバックナンバー「下品でナンボ!ホンカー特集」を参照されたい。

泥臭さむんむんで吹きまくるが、基本的なスタンスが、何というかどっしりしている印象を受ける。ビッグ・ジェイ・マクニーリーなどのいわゆるホンカー族と比べると、よりジャズ的と言えるかもしれない。ギャンギャン吹くというタイプとは一線を画する。
あくまで私個人の好みであるが、テナープレイヤーにはこういうのを聴いて欲しい!!
で、オススメはこちら。

"Chittlin’ Shout" 

チタリン(Chittlin’)というのは豚の小腸のことらしい。
B.B.キング曰く、肉を買う金のない黒人がチタリンを買って食う。それが転じて、黒人地区の小さいクラブで演奏することをチタリン・サーキットと呼ぶようになったと。
そういうところの客は皆耳が肥えていて、つまらない演奏をすると野次ったり、物を投げつけたりするそうである。
コブもチタリン・サーキットで揉まれて這い上がっていったミュージシャンの一人である。
アルバムの内容を一言でいうと、ブルース、ファンク、ソウル、ジャズのごった煮。

小手先のテクニックは一切無視!男だぜ!
71年録音。

"Blow Arnett Blow!"

ゴリゴリ系サックスの代表格であるエディ・ロックジョウ・デイビスとの共演。フロントを2テナーにして吹きまくる、夢のような一枚。
ソロバトルを聴いていると、二人のスタイルが違って面白い。
ロックジョウはかなり速いテンポでも、拍に忠実にはめ込んでいく速射砲のようなプレイ。
かたやコブは、最初から拍を無視して好きなように吹く。笑える。
特に2曲目の”Go Power!!”の演奏は圧巻だ。この曲はI Got Rhythmと同じ(多少単純化しているように思うが)コード進行であるので、コピーの素材としても面白い。ブルース系プレイヤーらしいわかりやすいアプローチが聴いていて楽しい。

"Smooth Sailing"

唸りまくるオルガンをバックに、コブがブリブリ吹く。
先に紹介した2枚と比べると若干おとなしい感じか。


聴いてみた方はお分かりかと思うが、紹介したアルバムはどれも熱い演奏ばかり。
しかし、驚くべきとこに、これらのアルバムを録音したとき、コブは自力で歩けない状態であったのだ。
56年の自動車事故に遭い、

二度と自分の足では歩けなくなってしまった。












松葉杖にも関わらず、ライブでぶちかますアーネット・コブ。







だが、不屈の精神で演奏を続け、ライブでは松葉杖をわきの下に挟んで立ち上がり、テナーをこれでもかと言わんばかりに吹いたという。
1989年、71歳で死去。