2010年12月31日金曜日

エリック・ドルフィー/"Far Cry"  および大晦日のご挨拶

2010年最後の日にふさわしいプレイヤーについて何か書こうと考えたのだが、
エリック・ドルフィーを選んだ。


※ドルフィーについては様々な文献で書き尽くされているが、大晦日だし気にしない。






行き詰ったハードバップの時代から、モードとも違う方法で脱却し、フリージャズへの架け橋となったが、その先に行く前に死んでしまった。

仮にドルフィーがそのまま生きていたなら、60年代以降のジャズも今とはまったく違った様相を呈していたかもしれない。



Far Cry

こんなこと書くとジャズファンの方々にぶん殴られるかもしれないが、ドルフィーを聴いてもなにをやってんだかまったくわからない。
が、それがまた極め付けに面白いとこでもある。

2010年12月27日月曜日

サージ・チャロフ/"Blue Serge"

ジャズ・バリトンサックスの第一人者といえばジェリー・マリガンなのであろうが、そんなこた知らん。俺はサージ・チャロフが好きだ。


世代的にはチャロフはマリガンの先輩。言うなれば、
白人バリトンソロイストの元祖なわけだ。








モノクロの写真に青が映えるジャケットアートが秀逸だ。









本作は56年録音の名盤、最後のリーダーアルバム。

享年34歳。あまりにも早過ぎる死である。


テナーと聴き間違うほどの軽やかなサウンドだが、フォルテッシモになった瞬間にショートベルのバリトンから噴出す音は極太

フレーズ中に突然最低音をボフッと使うあたりからも、バリトンソロイストっぷりが伺える。

4曲目"All The Things You Are"の流麗なバップフレーズ。


そしてアルバム最後を飾るバラード"Stairway To The Stars"。

『銀河への架け橋』とでも訳そうか。

情景が目に浮かぶような美しい曲に情感たっぷりのバリトンサックスソロ。チャロフはスローな曲で抜群の表現力を発揮するプレイヤーのようだ。

今更ながら自信をもってオススメする、ジャズ・バリトンサックス名盤中の名盤である。

2010年12月25日土曜日

J.R.モンテローズ/"Straight Ahead"

ジャズファンの間では、J.R.モンテローズは初心者を寄せ付けない、マニア好みのテナーとされているらしい。
寺島靖国さん曰く、「日陰者のテナー」。
たしかに、言い得て妙だ。
ハードバップ時代のプレイヤーだが、ぶつ切りにしたようなフレージングは流暢とは言い難い。
これといった華があるようにも思わんし、
「だったらロリンズ聴けばいいだろが。」という声が聞こえてきそうである。
しかしそれでもなお、確実にモンテローズファンがいるのは、やはり「音」だろう。
ちょっと掠れたような、サブトーン満載の太い低音。
高音域はアクセントをはっきりつけるブツ切りサウンド(モンテローズ節)も手伝って、ともすればマクリーンのアルトのように聞こえる時さえある。
これがモンテ中毒の秘密なのかもしれん・・・。
“Straight Ahead”

※『ザ・メッセージ』は再発されたタイトルなので内容は同じだよ。

“Violets For Your Furs”(コートにすみれを)の名演で有名な68年録音盤。
サブトーン全開の”I Remember Clifford”に、これぞハードバップと言うべき”Short Bridge”。
ブルーノート盤が一般的に人気らしいが、
私はコレが一番モンテローズらしさが出ていると思う。
たまにはこういう激渋なのも聴いてみると新鮮だなぁと・・・。
しかし、たかがCDがなんでこんなに高いのか。わけがわからん。
これじゃ誰も買わんだろうに。

■Musicians
J.R.Monterose (ts)
Tommy Flanagan (p)
Jimmy Garrison (b)
Pete La Roca (ds)

☆それでは次回をお楽しみに☆

2010年12月22日水曜日

女のアルト ヴァイ・レッド/"Bird Call"

き、来ました!


パーカー派女アルト奏者、ヴァイ・レッド(Vi Redd)の

激レア盤がようやくCD化されることと相成った!



1928年生まれ。エリック・ドルフィーとは学友、ハンプトン・ホーズとはセッション仲間だったらしい。
(なんだ、そのうらやましいシチュエーションは!!)


実力の割りに過小評価されているアルト兼ヴォーカリストである。
特に国内での知名度は低いといわざるを得ない。



が、レコードに針を落とせばバキッとしたパーカー直系のゴキゲンな(古いな・・・)アルトソロが飛び出す。パワーは男勝りだ。
さらに、ブルースに根ざすザラッとした声質のヴォーカル。


本作は、パーカーのナンバーやスタンダードを中心に取り上げているわけだが、

どアタマから彼女の声にグッとくる1曲目”If I Should Lose You”、パーカーの名曲”Anthropology”、ガーシュインの”Summertime”など、
これでもかという名曲が揃う。



しかし!俺が個人的に
強烈にオススメ

したいのはスローナンバー”Old Folks”。

この音の伸びは一体なんなのだ。泣かせるポイントを心得とる。
そして、ヴィブラフォンの語りかけるようなソロが続く。

アルバムのラストに相応しい、まさに名演。



こういう珍名盤の中に、聴いたことのないすばらしい演奏が埋もれている。これだからレコード漁りはやめらないのだ。

■Musicians
Vi Redd (as,vo)
Kansas Lawrence (tp)
Roy Ayers (vib)
Russ Freeman (p)
Leroy Vinneger (b)
Richie Goldberg (ds)
Herb Ellis (gt)
Bob Whitlook (b)


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ソニー・スティット/"Newyork Jazz"
エリック・ドルフィー/"Far Cry"  および大晦日のご挨拶

2010年12月16日木曜日

片山広明/”Ninety-Nine”

「ジャズに目覚め演奏活動を始めて以来ずっと、私の目指すのはスゴイ音だった。
ハッタリと言われようが、フレーズがない(?)と言われようが、渋さを知らないと言われようが、スゴイ音楽をやりたかったのだ。」
(”Ninety-Nine”ライナーノーツより抜粋)
片山さんの演奏をライブで見たことがある。本当に「スゴイ」音だった。
数ミリの幅しかないマウスピースとリードの隙間に全力で息をぶち込むような、凄まじいステージであった。

本作は1987年に『ドライ・シェリー』としてLPで発売されたものの復刻盤である。

このLPは数百枚しか発表されなかったもので、都内各所のディスクユ?オンで探し回ったが結局見つからなかったっけ。
テナーに、ベース、ドラムのトリオによる演奏。たった3人でこんなに音が分厚くなるものなのか。

私は何しろ1曲目が好きだ。超スタンダードの”My One And Only Love”。
8分の3拍子で演るにも関わらず、その音はまさにジャズ。4ビートしか認めないなどとほざく奴は引っ込んでおれと。
この1曲目を聴くと、「ああ、この人はメロディーメーカーなんだ。」と思う。

獣の咆哮の如き野性味あふれるテナーにそこはかとなく感じる哀愁は一体何なのか。
リズムセクションはこれでもかという重さ。

外タレの猿真似ではない、80年代日本ジャズの隠れ名盤と思う。
■Musicians
片山広明(Ts)
早川岳晴(B)
つの犬(Ds)

■Songs
1,My One And Only Love
2,Time Manager
3,504
4,99
5,An Emotion
6,Dry?Drei?
7,Good Bye Pork Pie Hat
8,Bye Bye

ちなみに
片山さんは酒飲みで有名である。
リハでもレコーディングでもちびちびやりながらだそうである。
某ライブハウスのスタッフは片山さんの体調を気遣って、ほとんど焼酎の入っていないウーロンハイを出すらしい(あ、これ片山さん読んだら怒るかな・・・。)
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竹内直(Ts,Fl) / "Live At Star Eyes featuring 後藤浩二"

2010年12月14日火曜日

SAXEMBLE(ジェームス・カーター)

ブログには統計表示機能というのがあって、ページを見てくれた方がどんなキーワードでたどり着いたか、どの記事が頻繁に読まれているかなどを管理者は知ることができる。
で、当ブログで最近人気なのは
ジェームス・カーター(James Carter)らしい笑。

近頃はおとなしくなってつまらんとの批評も聞くが、時期やアルバムによって差はあるものの、やはりカーターはめちゃくちゃで面白い。
というわけで、今回はカーター絡みのアルバム”Saxemble”をご紹介。


※実はこれ、フランク・ロウがリーダーのグループらしい。が、ロウについては書くことがないので素通りすることにする。ロウさん、すみません。
「サックスアンサンブル」を短くしてみました、みたいな安易なアルバムタイトルはどうにかならんのかと思うが、まあいいとしよう。
俺はメンバーと曲目を見て即買いした。

■Musicians
James Carter (As,Ts,Bs)
Frank Lowe (Ts)
Michael Marcus (Manzello,Bass sax)
Cassius Richmond (As)
Cindy Blackman (Ds)
with
Alex Harding (Bs)
Bobby Lavell (Ts)
サックス6本(!)+ドラムという、なんとも凄まじい編成だ。

2010年12月6日月曜日

ハミエット・ブルーイット(バリトンサックス)

待ってました、大統領。
真打登場である。

俺の一番好きなバリトンプレイヤー、
ハミエット・ブルーイット(Hamiet Bluiett)。
世では70年代ロフト・ジャズやワールド・サキソフォン・カルテットでの活躍が有名。
基本スタイルは無論フリージャズなのだが、演奏形態は様々。バリトンサックスグループを率いたり、パーカッションと競演してアフリカン・スピリチュアルになってみたり・・・。

ごちゃごちゃ書いても仕方ない。

ともかく、ショートベルのバリトンから噴出す

地鳴りのような音を聴け!    

あ、写真はLow A付だった・・・。しまった笑
“With Eyes Wide Open”

ブルースからアフリカン、スローナンバーまで入っていてお得な一枚。
3曲目の”Monk&Wess”なんか、どアタマから「ブベブベ ブベブベーベレベっ」と、バリトンサックスはかくあるべき、てな具合のテーマが飛び出てきてギャハハと笑いがこみ上げてくる。
これだからモンクなのかと、妙に納得してしまう。

それが一転、5曲目のバラード”Song For Camille”になると、状況は一変する。
心の琴線に触れるメロディーというのは、掛け値なしにいい。
この曲はアルトやテナーではだめだ。バリトンでないと。
“Live At Village Vanguard”

ブルーイットのバリトンはアホみたいによく歌う。
全曲スローナンバーだが、当然単なる甘ったるいバラードブックではない。
バラードを吹いてもマリガンのようにはならないわけで、流麗さとかそんなヤワな表現とは無縁の、ひたすら男臭い演奏になる。

リズムセクションの好サポートも印象的だ。4曲目冒頭の4分半にも及ぶベースソロなど、途中から熱気むんむんである。
じっくり聴きたい方には強烈にオススメする。
*******************************************************************************
ブルーイット名義のアルバムはそこそこ多い。
なんでもかんでもオススメなわけではないし、前衛がベースのスタイルが好きかにもよる。
しかし、
これを聴かずに一体何を聴くというのか


失敬、少々興奮してしまった。
おしまい。

2010年12月2日木曜日

ジーン・アモンズのテナーバトル

ジーン・アモンズが好きと聞くと、
ん~、男だなあ、
と感じる。


←どこのギャングスタですか











コールマン・ホーキンスのような豪快な音色を持ち、レスター・ヤングに多大な影響を受けたプレイヤーだ。
ド派手が売りのテキサステナー(いわゆるホンカー)とは一味も二味も違う、いわば「シカゴ派」。
※シカゴ派にはフレッド・アンダーソンとかもいるが、それはまた今度。

コッテコテのクサさ満載、男気120%
加えて、サム・テイラー並みの、やらしいサブトーン。
極めて愛すべきテナーである。

そんなジーン・アモンズはキャリアの中でしばしばテナーバトルを演っており、これは注目しないわけにいかない。

"Boss Tenors"

61年録音、ソニー・スティットとのバトルモノ。
このころ既に2人はかなり有名だったが、仲がよかったらしく他にも何枚か2テナーバトルモノをだしている。
パーカーフレーズ炸裂のスティットにあおられ、さらにコテコテするアモンズが最高な一枚である。
定番曲”Blues Up And Down”でのチェイスは圧巻。

"The Chase!"

こっちはデクスター・ゴードンとのバトル。
デクスター・ゴードンはワーデル・グレイとのバトルが有名だが、実はジーン・アモンズとのバトルもコアなファンには有名らしく、ビリー・エクスタイン・オーケストラでは一緒にブリブリ吹いていた。
(その音源があるらしいが、持ってないんだこれが・・・。)

で、今回ご紹介するのは二人の
ひたすら暑っっっっ苦しいライブ盤である。

白熱しすぎて演奏はところどころ荒削り。客の「イェ~、ジャグ!」みたいな歓声がモロに録音されてて笑える。
※ジャグというのはジーン・アモンズのあだ名。何でこう呼ばれてたかは知らん。

デックスはバップ・フレーズを連発し、かなりキレている。
片や、肝心のアモンズのソロはところどころかなりテキトーで、これまた笑える。バンドの音量バランスもかなりテキトーだが、ライブの臨場感がバシバシ伝わって来る。

"Goodbye"

ついでと言っては極めて失礼だが、名盤「グッドバイ」も挙げておこう。何しろこれがアモンズの遺作になってしまったわけだからスルーはできまい。

ギルバート・オサリバン(古い!)の”Alone Again”を収録していて、コアなアモンズファンからは敬遠されたりするらしいが、んなこた知らん。

爽やかなポップスの超名曲が
うわ、臭っっっっさ!!
という演奏になってしまうのだから最高だ(笑)。

バップ・フレーズは練習すればある程度真似できるが、こういう譜面化不可能な
「フボッ、フボボボァ~~ん~」(?)
みたいな吹き方はそうそうコピーできない。

関連記事
ジョニー・グリフィンとエディ・ロックジョウ・デイビス/"Lookin’ At Monk"
デクスター・ゴードン(Ts)/"Daddy Plays The Horn"
ソニー・スティット/"Newyork Jazz"

☆次回をお楽しみに☆

2010年11月28日日曜日

GFシステムのリガチャー

アルトではジョディのメタルを使っているのだが、付属品のリガチャーがロブナーの革のやつで、前からイマイチだなぁと思っていた。


ロブナーは音がかなり暗くなるので、ギンギン系のメタルマッピに合わせると音色がマイルドになる。

かつ太い音が出せるので使っている人は多いのだが、

反応が鈍い

という欠点もある。

反応が鈍いと、吹き始めに「バッ」と息を吹き込むようになってしまうきらいがあり、そうなると口に余計な力が入りやすくなる(気がする)。



で、このたび新大久保某所で購入したのが

GFシステム

のリガチャーである。


材質は合成皮革みたいなので作ってあるが、革の厚みはかなり薄い。

肝心の音色は、結構ガツッと鳴る印象だ。
サウンドがオープンになるというか・・・。

同じ革対応のロブナーとは別物といっていいだろう。

音の立ち上がりの反応も早い!



プロで誰が使っているかは知らんが、



いや、これいいですよ。ひひひ

2010年11月24日水曜日

武田和命 / ”Gentle November”

ぬお!CD化されてたのか?!
しかも高音質盤で再販されているとは!!
大学に入ったばかりのころ、雑誌で偶然知ったこのレコードが気になって気になって散々探して回ったことが懐かしい。


武田和命さんは1960~80年代に日本ジャズシーンを駆け抜け49歳で亡くなってしまった、

伝説的テナー奏者
である。
オープニングの広いマウスピースから放たれる、なんともいえないギザギザしたような、肉声っぽい独特の音と、不器用な語り口調のようなプレイで、天才の名を欲しいままにした。

今回紹介するのは山下洋輔さんのサポートを得た
珠玉のバラッド集『ジェントル・ノーヴェンバー』。

日本においてまだジャズがアンダーグラウンドそのものであったころの本物のジャズ。

晩秋の季節に一人で聴きたい、最高の一枚である。
1曲目はSoul Trane。のっけからやられます…。
その他は、是非ご自身の耳で確かめていただきたい。
ジャズテナー好きなら、いや日本男児なら、購入はもはや義務である(と思う)。

というか、
売れ行きの悪い超名盤
というものはせっかく再販されてもすぐに
また廃盤
になってしまうことも多い。本作も例外ではないと思うので、「おっ!?」と感じた方は早めのチェックをオススメする。

■Songs
1, Soul Trane
2, Theme For Ernie
3, Aisha
4, It’s Easy To Remember
5, Once I Talked
6, Our Days
7, Little Dream
8, Gentle November

■Musicians
武田和命(テナーサックス)
山下洋輔(ピアノ)
森山威男(ドラムス)
国仲勝男(ベース)

関連記事
山下洋輔トリオ/キアズマ
竹内直(Ts,Fl) / "Live At Star Eyes featuring 後藤浩二"
日野元彦カルテット feat. 山口真文(Ts) / "流氷"

年末はTAFで締めろ! ~ライブ告知~

突然だが、私が所属しているアマチュア・ジャズ・ビッグバンドのライブが、

来る12月18日に

行われることになった!!




上記ビラをご覧いただければおわかりになると思うが、このバンドは

どこかのパートが血反吐を吐く曲じゃないとやらない





という、

キ〇ガイな
(おっと、こういう言葉遣いは左な方に怒られそう)


バンドである。


一体何が好きでやっているんだか自分でもわからんのだが、ひとつ言えるのは

限界に挑戦している人間は、面白い


ということだろうか。

仕事に、私生活に忙しい社会人にとって、アマチュア・バンドというのはこの上ない玩具であり、どうせやるなら面白いことやろうってなわけで、こんななってしまったわけである。


社会人が青筋立て、目を血走らせて、演奏しているところを見てやろう、という奇特な方、

是非是非見に来ておくんなまし。

2010年11月18日木曜日

楽しくて悲しいマウスピースのお話

どのマウスピースを使うか


これはサックスプレイヤーにとって、永遠のテーマのひとつであろう。

あの憧れのプロと同じマッピを使えばあんな音が出せるんじゃないか、

というありがちな幻想に突き動かされ、ろくに吹けもしないマッピをまたひとつ買ってしまう。

我々にとっては、ある意味麻薬みたいなものだ。

たとえば、「サンボーンみたいに吹きたい!」
と思って、楽器を始めて1年以内にデュコフのマッピを購入し、

吹いてみたら絶望した笑

という人は相当数いる。

※多くの初心者に道を誤らせるサンボーン




マルサリスになりたくて(爆笑)ガーデラのマッピにヘムケ4半のリードをつけたら
音が出なかった

とか、

ARBメタルを吹いたら虫みたいな音になった
(これは筆者高校生のころ。いまだにトラウマである)


などなど、こういったウソのようなホントの話は枚挙に暇がない。

※ARBといえば、クリス・ハンターでしょう↓



失礼、こんな逆武勇伝はどうでもいいのだ。

で、本題である。

筆者は高校生のころアルトではド定番メイヤー5番を使っていたが、たとえばウッズのような、「パキッ」とした、エッジのある音はぜんぜん出せなかった。
音がモコモコしてしまうのだ。高校のときに比べてアンブシュアがだいぶマシになった今でも似た状況になってしまう。

その理由には以下のようなものがあると考えられる。

① 昔のいわゆるニューヨークメイヤーと現行品とでは、そもそも材質が違う。

当時は環境汚染上等だったので、ラバーのマッピには硫黄が含まれていたらしい(スゲ)。

② そもそも、フィル・ウッズは神である。

神と同じ音を出そうなんて、不敬罪にも程がある。

※神による神がかった(?)演奏。即買いすべき名盤ぞろい。

↑若き日のウッズの超名盤。
これの"Easy Living"のアルトソロがあまりにすばらしく、3,000回は聴いた。



↑amazonに画像がないので、貼っといた。
97年録音なので、比較的ジジイになってからの吹込みだ。表題曲"Chasin' The Bird"はキレがすばらしい演奏なのだが、やってる本人たちも相当白熱してるらしく、曲のアタマと終わりとではテンポが20くらい上がっている笑!


↑レッド・ガーランドとの競演で名高い"Sugan"。
スガンってなんだろうか?まあいいか・・・。


話を戻そう。
まあ、要するにお前の吹き方が悪いのだ、と言われればそれまでだが、まあ若気の至りってことで勘弁してほしい。



ただ、不思議なことがある。

アルトではメイヤーユーザーがもっとも多いのだが、上手い人でも
「パキッ」とエッジの立ったいい音が出せる人と、私のようにモコモコしてしまう人と、明らかに2種類いるような気がするんだこれが。

なぜかはわからない。

しかし、同じことがテナーのド定番オットーリンクでも発生しているように思う。

もしかして、そのマウスピースに合った口腔内の構造みたいなものがあって、できる人できない人が分かれてしまうのであろうか・・・?

もしそうだとすると、私はメイヤーでいくらがんばっても「パキッ」とはいかないのであろうか・・・?

そんな残酷な・・・。



ちなみに、そこらへんの壁をどうしようもなく感じたので、私はハイバッフルのマッピに逃げた笑。

こういう解決方法だってあってもいいかなと。

いかがでしょう?

2010年11月13日土曜日

デクスター・ゴードン(Ts)/"Daddy Plays The Horn"

次第に肌寒くなるこの季節、仕事からの帰り道に”Autumn In New york”が無性に聴きたくなったりするわけである。

真っ先に浮かぶのは、デクスター・ゴードンのこの一枚。

"Daddy Plays The Horn"








これまたジャケットが秀逸だ。







40年代にレスター・ヤング流の柔らかいトーンとチャーリー・パーカーが完成させたバップのイディオムを融合させ、一気にスターダムの上り詰めた。
が、50年代はクスリをやりすぎて活動はままならず、塀の中で過ごすことも多かったらしい。
さらには、よき相棒であったワーデル・グレイ(ts)が55年に変死してしまう。

そんな中、ベツレヘム・レーベルによって55年に録音されたのが本作だ。

悲惨な時期から復活できたのか、カムバック作と呼ぶに相応しいすばらしい出来栄えになっている。

ちょっとマヌケで、しかし楽しいテーマが印象的な表題曲"Daddy Plays The Horn"に始まり、

5曲目に"Autumn In New york"。
これがとてつもなくグッとくるわけだ。
シナトラを筆頭に、数え切れない有名プレイヤーに演奏されてきたスタンダード。

音色は男性的逞しさを強く感じるが、力で押す雰囲気はまったくない、包み込むようなトーン。

さらに、デックスのソロはタイム感が独特なのだ。
一聴すると、遅れているようにも感じるのだが、決してそうではない。リズムの取り方が大きいということなのだろうか。
ソロ自体のフレーズは比較的単純なものが多いが、この独特のリズムも含めてコピーするのは非常に難しい。


ふくよかなトーンに、ゆったりとしたリズム感は、ジャズテナーのひとつの理想系といってもよいだろう。


デックスのアルバムには多くの名作が残されているが、中でも強くオススメしたい一枚だ。

■Musicians
Dexter Gordon (Ts)
Kenny Drew (P)
Leroy Vinneger (B)
Larry Marable (Ds)

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ジーン・アモンズのテナーバトル

2010年11月10日水曜日

デュコフって誰でしょう(下)

デュコフのマウスピースは、
ボビー・デュコフというオッサン
が作ったものである。



実は(といったら大変失礼だが)このオッサン、
プロのテナープレイヤーであったのだ。

そして、どんな演奏をしていたかというと、


なんと柔らかいサブトーン

だったのである。現在のデュコフマッピのギンギンな音色とはまったく正反対だ。

トミー・ドーシー楽団にも在籍し、自身のオーケストラでもレコードを作った。

“Sweet Swingin’ Sax In Stereo”

←これを手に入れるのはそこそこ苦労した。1,500円だったけど。












では、サブトーンをボフボフ吹いていたデュコフがギンギンマウスピースを作り始めたのはなぜなのか。

以下勝手な妄想だが、ジャズ黎明期から現在に至るまで、マウスピースマーケットではテナーならオットーリンク、アルトならメイヤーが圧倒的シェアを占めており、デュコフがリンクに似たマッピを作っても(最初はそういうのを作っていた)市場に食い込めなかったのではあるまいか。

そうこうしているうちに時代はフュージョン・クロスオーバー時代になり、そちらに方針転換した、なんてこたないかな。

そんなデュコフも今年生きていればなんと92歳である。元気にしてるんだろうかと思い、本家ホームページを見てみたら・・・。









心配して損したわい・・・。

オチがなくてスンマセン。
☆おしまい☆

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2010年11月9日火曜日

デュコフって誰でしょう(上)

サックスを嗜む人ならば、一度は「デュコフ」という名前を聞いたことがあるだろう。

ご存知、ロック・フュージョンで多用されるマウスピースのメーカーである。

このマッピを使っているもっとも有名な人といえば、これまたご存知、デイビッド・サンボーンだろう。


現在はアルミのようなツルツルの材質であるが、70年代は鉛が含まれた合金で作られており、経年とともに酸化して黒く変色することから国内では
「黒デュコフ」
とも呼ばれ、ケッコーなお値段で取引されている。
しかし、鉛が含まれているため材質がやわらかく、ネットオークションで気合で落札したらサイドレールが削れて使い物にならないなど、

ババをつかまされることもしばしばとか。


この時代のデュコフは現行品より音が若干重く暗くなる傾向があり、非常に人気が高い。

サンボーンや若き日のブレッカーも好んで使っていた。

↓↓あまりにベタ過ぎるが、教科書的名盤ハズレナシ。



ちなみに、その昔アメリカの廃車解体屋で出た鉛をもらってきてデュコフのマッピを作ってたとか、怪しい都市伝説の類まである(ホントかよ)。


まあとにかく、鉛なんて毒なわけで、そんなもんを口に含んでベロベロチュバチュバしていいはずがない。

でもまあ、
音がよくなるんならいっか!!!!


ちなみに私はバリトンでマイアミ・フロリダ時代のものを使っている。

これは「黒デュコフ」時代の後に作られたものなので、素材は現行のものに近く銀色でツルツル。
ただ、現行品に比べ若干重量が重く感じる(気のせいかな…いやいや気のせいじゃない!)。

音もより低重心に聞こえる(これまた気のせいかな…いやいや気のせいじゃない!)。


まあとにかくだ、さまざまなハイエンドマウスピースが氾濫する現在にあっても、デュコフはそのピーキーかつハイパワーなサウンドで根強い人気を誇っている。

曰く、「ギターのディストーションに負けないサウンド」。
曰く、「フュージョン時代の革命的マウスピース」。

ところで、
そもそも「デュコフ」ってどんな人なのだろうか?

デュコフって誰でしょう(下)はコチラをクリック!

2010年11月3日水曜日

ジョン・ルイス/"Grand Encounter" サックス:ビル・パーキンス

好きなテナーサックスは誰かと聞かれて、ビル・パーキンスと答える人はほとんどいないだろう。
スーパーサックスや秋吉敏子オーケストラに籍を置いたころもある西海岸系のテナーだが、
作品も少なく、マイナーなプレイヤーといわざるを得ない。

そんな彼の随一の名演と呼べるのが、MJQのディレクターと務めたピアニスト、ジョン・ルイス名義の
”Grand Encounter”
である。

まず、ジャケットがいい!
夕日の差す野原に寝転がる可憐な少女。

たまらんぞ!この野郎!
まずこの時点でジャケ買いである。

肝心の内容だが、もともとMJQも激しい演奏をするグループではないので、「東西の邂逅」と銘打った本作も、東西対決ムードはなく、ましてハードバップのようなバキバキ系でもなく、
ゆったりとした時間が流れていく。

ビル・パーキンスは、スタンダードの名曲に乗せて、あらかじめ譜面に書かれてあるかのようなメロディックなソロを淡々と吹く。

特に3曲目”Easy Living”が秀逸。バラードを柔らかな音で奏でるテナーは必聴だ。


■Musicians
John Lewis (P)
Bill Perkins (Ts)
Jim Hall (Gt)
Percy Heath (Ba)
Chico Hamilton (Ds)

2010年10月28日木曜日

フレデリック・クロンクヴィスト(As)/"Maintain!"

最近注目しているスウェーデンのアルト奏者、フレデリック・クロンクヴィストである。


汁もしたたる黒人ジャズばかり聴いていたので、北欧ジャズは正直あまりカバーしていなかったが、ふと手に取ったこのCD、
かなり熱い。


ずしっと重たい芯のあるアルト。

ボッサのリズムに乗せた、どことなく寂しさを感じさせるメロディーの6曲目”North African Pearl”など、音の特徴をはっきり聴くことができる。

テーマ明けのソロから一気にギアを上げる2曲目は、ソロ・曲調ともにケニー・ギャレットの影響を感じるが、これはこれでよしとしよう。



私見だが、基本的にジャズは

アホな音楽

である。
「ケツの穴(よーするに肛門)」が語源という噂もあながち嘘ではないと思っており、ともかく「ガッハッハ!」と笑えるところにかっこよさがある。

ただ、この人のアルバム全体に漂う、なんともいえない透明感も、これまたすごくいい。
独特の透明感とソリッドなアルトを、でしゃばり過ぎないリズムセクションが裏打ちする。
オススメです。

■Personel
Fredrik Kronkvist (As)
Daniel Tilling (P)
Martin Sjostedt (Ba)
Daniel Fredriksson (Ds)

2010年10月19日火曜日

International Baritone saxophone Conspiracy

って、なんじゃらほい。

直訳すると、
「国際的バリトンサックスの陰謀」。
なんじゃそら笑。

チャールズ・パパソフというオッサン名義のバリトンサックスアンサンブルである。



ニヤリ






このパパソフなる人は何者かというと、サックス奏者、役者、作曲家など複数の顔を持つマルチアーティスト。

スパルタとペルシアの殺し合い映画『300(スリーハンドレッド)』にも出ているらしい(!)。何の役かはわからんが…。



超B級超大作映画『300』。
ペルシア兵を斬ってえぐって大騒ぎ。
結構おもしろかったよ。







で、肝心のCDだが、バンドの編成は

バリトンサックス6本のみ(!)


という異色の録音である。

無理矢理ジャンル分けすればフリージャズになるのだろうが、完全なフリーフォームではなく、むしろ現代音楽に近い。

全員がフリーインプロで吹いたかと思ったら、クラシックのような美しい和音のテーマが突然提示されたりと、飽きさせない。

8曲目にはミンガスの直立猿人なんかも入っている。

彼女(もしくは彼氏)と部屋でくつろぎながら聴くには



まったくオススメしない



が、「バリトンサックスってこんなこともできるのか!」と思わせる、実に面白いCDである。


どう?欲しくなったでしょう!!?



※ちなみにメンバーには俺の大好きなハミエット・ブルーイット先生が。

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それでは!次回をお楽しみに。

2010年10月14日木曜日

マーク・グロス(As)

この人の音は本当にすばらしい。
アルトもソプラノも、全音域で力みがまったく感じられない。
オラオラーっとエキサイトして吹いているときも、音が自然なのだ。普段呼吸するように楽器を吹いている。これは本当にすごいことであると思う。
どこで読んだか忘れてしまったが、マーク・グロスのアンブシュアは極めて合理的な形をしていることで有名だそうだ。
日本での知名度はあまり高くないようだが、ビッグバンドのパーソネルを見ていると結構出てくる。デイブホランド・ビッグバンドのアルトもこの人だ。

本作は1枚目のリーダーアルバム。
12分にもおよぶ「チャーリー・パーカー組曲」は、目まぐるしく展開するパーカーメドレーが仮装大賞みたいで思わず笑ってしまう(ついにはボーカルまで入って来る。なんだそれ)。
超速スイングあり、バラードありで飽きさせない。これはアタリだった。現代版バップの隠れ名盤といえるだろう。
現在、デューク・エリントン・オーケストラのアルトを務めているようだ。フルバンドでの音も是非聴いてみたい。
そういや、エリントン・オーケストラのリーダーって今誰だっけ?まあいいか…。


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2010年10月5日火曜日

私の好きなジャッキー・マクリーンのレコード

音楽を聴く側からにしても演奏する側からにしても、楽器が「上手い」に越したことはない。

しかし、テクニックのある「上手い」演奏が必ずしも聴衆の心を捉えるとは限らないわけである。



「どちらかといえば下手」
だが
「抜群にかっこいい」
プレイヤー。

私の中のその代表格が、ジャッキー・マクリーンである。


早いパッセージでは指の回りはイマイチだし、何しろ音程が悪い。


それでもなお、マクリーンの演奏が我々を捉えて離さないのはなぜなのか。

「哀愁漂うトーン」だの、「訛りとも言うべきプレイ」だの、使い古されたマクリーン評を書くつもりはない。そんなものが読みたければそこらへんの雑誌にいくらでも載っている。



私が魅力を感じる理由はただひとつ。
音に男気を感じるからだ。

「少々音程が悪かろうが、俺はこう演る!」と言わんばかりの、堂々とした吹きっぷり。
パーカーのフォロワーと呼ばれながら、一聴してマクリーンだと認識させる、独特のリズム感と音遣い。
そういう演奏は、難しく考えすぎのテクニシャンが吹いたものよりも感動がある。

とはいえ、御託を並べてもしょうがない。とりあえず私的オススメを3枚挙げたので、とにかく聴いてみて欲しい↓。

①“Swing,Swang,Swingin”

マクリーン入門用
としてよく挙げられる一枚。
オリジナル曲による構成が多いブルーノート時代には珍しくスタンダード中心の選曲で、マクリーンのアルトが素直に聞けるアルバムでもある。
相変わらず音程は悪いが…。



②“Right Now!!”

比較的複雑なテーマの曲が多いが、全体的にまとまっている好アルバム。
夭逝したエリック・ドルフィにささげた2曲目が泣かせる。

音程の悪さも相まって、男気全開である。

ブロマイドみたいな写真を使わず、文字だけドン!と置いたジャケットにも男らしさを感じる。
アルバムタイトルは、訳すと「今だ、おりゃあ!!」ってか。



③“Demon’s Dance”

ぶっ飛んでるジャケットが印象的な、ブルーノート時代最後の録音。
4曲目の”Sweet Love Of Mine”はジャズ史に残る名演として名高い。
なるほど、ボッサのリズムにのせてテーマが始まった瞬間から伝わる緊張感と高揚感はたまらんのである。
この1曲聴くだけでも、このCDは買う価値ありだ。
ウディ・ショウとのコンビが聴けるという点でも貴重。


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ジャズアルトのひとつの時代を築いた彼も、2006年3月31日に亡くなってしまった。
一度はライブを見に行きたかった…。
今後も当ブログではマクリーン名盤を紹介していく予定である。

しかしまあ、この音程の悪さはもう少しどうにかならんのか。


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2010年9月15日水曜日

ジョー・ロバーノのDVD

ブログ更新は一体何ヶ月ぶりなのか・・・。
こんな適当な内容でも読んでいただける奇特な方が数名いらっしゃるようなので、久々に更新してみた。

今回はジョー・ロバーノである。



正直言って、これまでは

「口ひげもじゃもじゃのテナー吹くオッサン」

くらいの認識しかなかった(なんて失礼なんだまったく)。


オッサン↑

ふとしたきっかけでこのDVDを600円(!)で購入。
どんなもんなんだと見てみたところ、




ぶっ飛びました。オッサンなんて呼んでごめんなさい。


という結論に至った。
ジョー・ロバーノってこんな音してたっけ・・・。なんだかすごいぞ・・・。



テナー2本、アルト・バリトン・ペット・トロンボーン各1本にリズムセクションという、ビッグコンボ形式のバンドで、2001年パリでのライブを収めたもの。
曲はスタンダードが比較的多いが、かなりバキバキで、これぞバップという白熱のソロが展開される。
直球系の曲が多いので、聴きやすいってとこもあるが。

特にサックス吹きにはお勧めだ。
パーカーに捧げるオリジナル曲"Charlie Chan"はサックスセクションフィーチャーの超ドバップ。
かと思えば、"Embraceable You"のスローナンバーでのサックスソリなんかもう、鳥肌もんである。
バリトンはゲイリー・スマリアンだし。
ロバーノ本人の音は、なんと言うか、

説得力がものすごい。

早い曲だと指がからまっちゃったりしてるんだが、

低重心なサウンド

が、そんな瑣末なことは吹き飛ばしてくれる。


そして何より、

演奏してる側がすげー楽しそう

なのである。これは大事なポイントだ。
だってジャズだもん。本来は眉間にシワ寄せて聴くもんじゃない。

というわけで、これはお勧め。いかがでしょう?