2011年4月27日水曜日

坂道のアポロン

久しぶりの更新になってしまった。
今回はディスク・ユニオンとのコラボで話題になった漫画『坂道のアポロン』についてでも。


私個人をご存知の方であれば、少女漫画を読んでるなんて聞いたら頭がおかしくなったと思うだろう。
自分でも少々恥ずかしい。

しかし、これがなかなか面白いのだ。

1966年初夏、父親の仕事の都合で、横須賀から長崎県の田舎町へ転校してきたボンボン・薫。

ひょんなことから不良のジャズ・ドラマー千太郎と出会い、それまで苦しいだけだった薫の高校生活は思わぬ方向へ進むことになる。


千太郎の影響から、クラシック・ピアノしか知らなかった薫はジャズに夢中になり、二人は親友になっていく。


とまあ、あらすじはこんな感じである。



何がおもしろいって、
この漫画からはジャズの熱気が伝わって来るのだ。

音楽が聴こえてくる漫画というのは、そうはないだろう。
メインキャラクターの二人がセッションをするシーンが頻繁に出てくるのだが、これがたまらなく楽しそうで、メッセンジャーズの"Moanin'"やマイルスの"Four"が無性に聴きたくなる。


物語としては、登場人物たちが音楽に熱中し、恋愛に心を焦がし、他人に嫉妬し、家族に悩み・・・等々、ありがちな青春白書的展開ではあるが、

高校時代独特の眩しさ、思春期の危うさを実に上手く描いていて、妙になつかしい気分にさせてくれる。



著者が主人公たちにジャズを演らせたのには、「人生は何があるかわからない、アドリブようなもんだよ」、というメッセージが織り込まれているのかもしれない。

うるっと来るシーンもあり、結構オススメである。




関連記事
アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ/"A Night In Tunisia"

2011年4月19日火曜日

なぜホンカーはテナーばかりなのか?

テナーサックスにはホンカーという部族(?)がある。
他には
「スクリーマー(絶叫する奴)」
「ブロー・テナー(吹き散らすテナーサックス」
より広い意味では「テキサス・テナー」
などと呼ばれたりもする。

←ホンカーの代表格の一人、ビッグ・ジェイ・マクニーリー。
客を興奮のるつぼに叩き込む、圧倒的におバカなパフォーマンスが最高だ。






要はブリブリギョエーと吹きまくるテナー族のことだ。

ブルースの派生系ともいえるジャンルで、ロックンロールにつながるようなスタイルの曲が多い。
当時のダンス・ミュージックのひとつといえるだろう。
しかし、「ブロー・テナー」という名称はあるが、
「ブロー・アルト」という言葉は聞いたことがない。
ビッグ・ジェイ・マクニーリーイリノイ・ジャケーエディ・ロックジョウ・デイヴィスアーネット・コブ、ハル・シンガー、ジミー・フォレスト、キング・カーティス、、ジョー・ヒューストン、ジュニア・ウォーカー・・・。
みんなテナー奏者なのだ。
ホンカーはテナーの専売特許なのか?その理由は何なのか?
楽器の特徴から考えてみた。


<なぜサックスなのか>
そもそもなぜサックスにしかホンカーはいないのか?
ホンカーと言われる部類にはサックス吹きしかいない。というか、サックス吹き以外にはホンカーと呼ばれる名前は付かない。
理由を考えてみたが、ポイントのひとつは自由度の大きさ
にあるように思う。
サックスはトランペット、トロンボーンなどの金管楽器と比べて、非常に肉声的な音がする楽器である。技術があれば息の音と聞き間違うようなサブトーンから、虫の鳴き声のような怪しい音までカバーが可能だ。
逆に言うと、自由度が高い分適当な楽器とも言えるが。
それに対して、金管楽器は良くも悪くも「金管の音」しか出ない。
歴史が古いこともあり、楽器としても完成されているので、適当さが入る余地が少ないと思われる。

<なぜテナーサックスなのか>
では、ブロー・テナーしかいないのはなぜなのか?
ここで、演奏者の吹き方を考えてみたい。
レスター・ヤングは楽器を横向きにして吹くし、ビッグ・ジェイ・マクニーリーに至ってはブリッジしながら「オギョー」と吹く。
対してアルトでは、ほとんどの人が楽器をガシッと構えて動かず吹く。
映像を見る限りチャーリー・パーカーもあまり動かないし、キャノンボールはU字管が腹にめり込んで固定されている(まあこれは冗談)。

つまるところ、
テナーサックスはいい加減さが味として受け入れられる楽器なのだ。
音域がアルトより低いことも影響し、吹き損じや音の揺れが「そういうプレイなのだ」と捉えられやすい。
ジャズテナーというジャンルが確立すると同時に、そういった演奏がテナーのスタイルのひとつである、と聴衆に認識されたのだ。
よって、多少メチャクチャにやっても許される(笑)。
反面、アルトで同じことをやると悲惨なことになる。
単なるヘタクソ、しかも聞くに堪えないヘタクソな演奏になってしまう(俺は身をもって体験した)。

さらには、ホンカーが吹くジャンプ・ブルースのような曲では、フロントでソロを取るテナーはヴォーカルの役割も務める。
客をノリノリにさせなくてはならない。
そのためには、ある程度メチャクチャをやっても許容される楽器であったほうが都合がよかったのかもしれない。
ガツンと低音も出せれば、絶叫のフラジオも出せるテナーは格好の道具だったのではないか。

<ホンカー名盤紹介>
さてさて、あれこれ書いてみたが、魅惑のホンカー・ワールドを知るには聴いてみるのが一番だ。
最近はジャンプ・ブルース系の音楽は流行らない。
ホンカースタイルでテナーを吹く人などほとんど見かけない。
だが、いい加減でおバカで底抜けに明るい音楽もまた格別にいいものだ。

■Honkers &Bar Walkers Vol.1

ホンカーのコンピ盤。
内容は比較的おとなしいが、ジミー・フォレストの名曲"Night Train"も入っていて、入門用(?)としては最適と思う。

■Recorded Live At Cisco's / Big Jay Mcneely

ホンカーバカ一代男、ビッグ・ジェイ・マクニーリーの熱気あふれるライブ盤。
「ヒーヒーヒィイイ~」とフラジオをキメまくり、お客さんは大喜び。
絶叫サックスだけでなく、オルガンが何気に渋い。


■Live At Fillmore West / King Curtis

説明不要の歴史的名盤。
ミスター・ホンカーであるキング・カーティスによる怒涛のライブ録音である。
"Menphis Soul Stew"や"Changes"など、ソウルの名曲を堪能できる。
コレを聴かずしてブラック・ミュージックは語れない!

2011年4月17日日曜日

満員御礼!! 大震災復興支援チャリティライブ

4月16日に新大久保Space Doで行われたTAFとTokyo F.O. Lab Bandによる大震災復興支援チャリティライブには、
なんと約120人の方にご来場いただき、大盛況でした。



募金額も、これまでのTAFライブ史上最高額となる20万円が集まりました。
す、すげぇ・・・!!

集まった募金は日本赤十字を通して、全額、被災地の方々の復興支援に寄付させていただきます。

今回のTAFセットリストはコチラ↓
1. The Los Endos Suite / Phil Collins
2. The Industrial Strength Stomp / Bob Florence
3. Emily / Bob Florence
4. American Express / Thad Jones & Mel Lewis
5. Hope / Toshiko Akiyoshi
6. Giant Steps / (arr.)Scott Hall  
(enc.) Knuckleball / Univ. of North Texas One O'Clock Lab Band

演奏は正直ヤバイとこもあり、冷や汗もんでした・・・。
会社の先輩方や学校の後輩が来てくれて嬉しい反面、いつも以上に緊張し、ソロの前は指が震えました笑。


対バンのTokyo F.o.Lab Bandさんは日大リズムのOB中心ということもあり、ラテンの手馴れた感じはさすが!
ホーンもガツンとパワーがあり、迫力がすごい。次回も是非競演させていただけたらと思います。

ご来場いただいたお客様、対バンのTokyo F.o.Lab Bandさんに、心より御礼申し上げます。

ありがとうございました。


さて、今春最大のお祭りは終わり、明日からはいつも通りのタフな日々が待っています・・・。

それではまた!

TAF Project公式ホームページ:http://tafproject.net/

2011年4月14日木曜日

ソニー・スティット/"Newyork Jazz"

今日はソニー・スティットの私的名盤(?)をご紹介する。

私はアルト奏者ではスティットも大好きだ。
生涯正統派プレイを貫き、奇を衒ったことを一切しなかった、生粋のバッパーである。

よくもまあ、数十年間も同じことをやり続けたもんだと、変な意味ではないが感心してしまう。


↑内容は文句なし。それだけにこのやる気を感じさせないジャケットがなんとも痛い。


スティットはやたらと多作なプレイヤーだ。
リーダーアルバムだけで軽く100枚(!)を越えるいうのであるからびっくり仰天である。
しかもそのほとんどがワンホーンカルテットなのだ。

たとえばウッズはドナルド・バードと2フロントの時期もあったし、マクリーンはグレシャン・モンカーⅢ世のような、上手いんだか上手くないんだかわからんプレイヤーとの競演なども多かった。
しかし、スティットの真骨頂はやはりワンホーンに尽きる。

2011年4月3日日曜日

TAF & T.F.O 大震災復興支援チャリティ Big BAND LIVE

私事ですが、来る4月16日に私の所属している社会人ビッグバンド"TAF Projiect"がライブを行うことになりました。

通常であればお祭り気分で大騒ぎするのですが、このたび東日本大震災が発生したため、
今回は
震災復興のためのチャリティーライブとさせていただきました。

"TAF Projiect"はこれまでのライブでも、しかるべきルートを通じて収益の一部を地雷処理キャンペーンに寄付させていただいおります。

ご来場を心よりお待ち申し上げております。



■開催日:4月16日(土)

■場所:SpaceDo
※JR新大久保駅徒歩3分、管楽器DAC地下。 http://www.kkdac.co.jp/cgi-bin/do/concert.cgi

■開場:13:30、開演:14:00    

※T.F.O14:00~、TAF15:30~
※終了17時頃。お時間は多少前後する可能性があります。お早目のご来場をお勧めいたします。
※当日は軽食・ソフトドリンク等はこちらで無料提供させて頂きますが、その他飲食持ち込みや、 演奏中の出入りも自由です。また、小さなお子様連れの方もお気軽にお立ち寄りください。

■料金
誠に勝手ながら、入場料金につきましては特に 金額を定めず、皆様の許す範囲の額を会場にて募金頂くと言う事にさせて いただき、
皆様からの募金は全額100%、日本赤十字社を通して、被災地の方々の復興支援に寄付させて頂きたいと存じます。
また、今回はライブ会場のSpaceDoさんのご厚意で、 震災復興募金にご協賛頂いております。重ねて御礼申し上げます。

■出演バンド紹介

★TAF  Projiect
腕に曲を合わせない,曲に腕を合わせるのモットーのもとに
「キツイ曲でも決して諦めない」
「世界平和」
の2つをコンセプトに、東京を中心に活動する、 社会人・学生を中心としたモダンビッグバンド。
通常のライブでは、収益金の一部を地雷除去キャンペーン等の 平和活動に寄付しています。
今回は、急遽曲目を一部変更し、穐吉敏子さんから直接ご提供 いただいた、原爆投下後の復興を祈る曲「HOPE」を演奏させて頂きます。
http://www.tafproject.net/


★Tokyo F.O. Lab Band(T.F.O.)
ラテンジャズを中心に、ファンクや フュージョンなど 幅広いジャンルの音楽を演奏する社会人Big Bandです。
日本を代表するラテン系学生バンド、日本大学Rhythm Society Orchの
OBを中心に、1996年の結成以来、月2回の練習を続け、 年4回のライブ活動を行っております。ラテンジャズを中心に、
未知の領域に果敢に挑戦し続け、常に進化するバンドT.F.O.。
今回はいったいどんなサウンドが創り出せるでしょうか。
請うご期待!!
http://asada.oops.jp/tfo/index.htm 

2011年4月2日土曜日

クルセイダーズ /"Scratch"(サックス:ウィルトン・フェルダー)

前回はベルグ・ラーセンのテナーマウスピースについて書かせていただいたが、
本日はウィルトン・フェルダーをご紹介する。

テキサス・テナーらしい鷹揚さがフェルダーの魅力でもあるが、ラーセンのマウスピースはコシのある音色作りの一翼をに担っていると思う。



フェルダーといえば勿論クルセイダーズだ。
名演が多いので一枚を選ぶのは難しいが、ライブ盤ということで『スクラッチ』を選んだ。

1977年録音。
ヴォーカルなし、インスト時代のころの作品だ。
瓶から水銀が流れ出ているという、趣旨も意味もさっぱりわからない謎のジャケットだが、フュージョンの先駆け的バンドのライブ演奏という点でも非常に評価は高いようだ。

何より聴くべきは3曲目"Hard Times"だろう。
この1曲を聴くためだけに本作を買う価値があるといっても過言ではない!

古いブルースのスローナンバーをフェルダーがフィーチャリングで歌い上げる、これを超名演と呼ばずしてなんとする。
運指とタンギングがところどころ合わなかったりと決して饒舌なテナーではないが、客の期待や盛り上げどころを心得た節回しがたまらん。

他にはキャロル・キングの名曲"So Far Away"もやっている。
曲自体はポップス曲をインストでやりましたみたいな感じなので個人的にはそこまでグッとこないが、ボントロとテナーがひたすら循環呼吸でロングトーンし続けるという、ある意味「名演」を聴くことができる。


しかし、バンドが有名になればなるほど、各プレイヤーのソロ活動は難しくなるものだ。
フェルダーもしかり、ソロ名義のアルバムも聴いたが、バンドの延長にあるサウンドという色彩が強く、「これならクルセイダーズ聴けばよくね?」という印象しか持ち得なかった。

サックスのスタイルとしても、ホンカー的キャラクターにはある意味限界があるということなのだろうか・・・。


Wayne Henderson (Tb)
Wilton Felder (Ts)
Joe Sample (Key)
Stix Hooper (Ds)
Larry Carton (Gt)
Max Bennett (Ba)