音楽を聴く側からにしても演奏する側からにしても、楽器が「上手い」に越したことはない。
しかし、テクニックのある「上手い」演奏が必ずしも聴衆の心を捉えるとは限らないわけである。
「どちらかといえば下手」
だが
「抜群にかっこいい」
プレイヤー。
私の中のその代表格が、ジャッキー・マクリーンである。
早いパッセージでは指の回りはイマイチだし、何しろ音程が悪い。
それでもなお、マクリーンの演奏が我々を捉えて離さないのはなぜなのか。
「哀愁漂うトーン」だの、「訛りとも言うべきプレイ」だの、使い古されたマクリーン評を書くつもりはない。そんなものが読みたければそこらへんの雑誌にいくらでも載っている。
私が魅力を感じる理由はただひとつ。
音に男気を感じるからだ。
「少々音程が悪かろうが、俺はこう演る!」と言わんばかりの、堂々とした吹きっぷり。
パーカーのフォロワーと呼ばれながら、一聴してマクリーンだと認識させる、独特のリズム感と音遣い。
そういう演奏は、難しく考えすぎのテクニシャンが吹いたものよりも感動がある。
とはいえ、御託を並べてもしょうがない。とりあえず私的オススメを3枚挙げたので、とにかく聴いてみて欲しい↓。
①“Swing,Swang,Swingin”
マクリーン入門用
としてよく挙げられる一枚。
オリジナル曲による構成が多いブルーノート時代には珍しくスタンダード中心の選曲で、マクリーンのアルトが素直に聞けるアルバムでもある。
相変わらず音程は悪いが…。
②“Right Now!!”
比較的複雑なテーマの曲が多いが、全体的にまとまっている好アルバム。
夭逝したエリック・ドルフィにささげた2曲目が泣かせる。
音程の悪さも相まって、男気全開である。
ブロマイドみたいな写真を使わず、文字だけドン!と置いたジャケットにも男らしさを感じる。
アルバムタイトルは、訳すと「今だ、おりゃあ!!」ってか。
③“Demon’s Dance”
ぶっ飛んでるジャケットが印象的な、ブルーノート時代最後の録音。
4曲目の”Sweet Love Of Mine”はジャズ史に残る名演として名高い。
なるほど、ボッサのリズムにのせてテーマが始まった瞬間から伝わる緊張感と高揚感はたまらんのである。
この1曲聴くだけでも、このCDは買う価値ありだ。
ウディ・ショウとのコンビが聴けるという点でも貴重。
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ジャズアルトのひとつの時代を築いた彼も、2006年3月31日に亡くなってしまった。
一度はライブを見に行きたかった…。
今後も当ブログではマクリーン名盤を紹介していく予定である。
しかしまあ、この音程の悪さはもう少しどうにかならんのか。
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