2011年6月11日土曜日

追悼 金井英人/アランフェス協奏曲

今回はサックスの話はあまり出てこないので悪しからず。


日本ジャズの牽引者であったベーシスト、金井英人さんが4月8日に亡くなった。
不覚にも、亡くなっていたとは知らなかった。
享年79歳。
悔やまれる死である。

1960年代初期、高柳昌行、富樫雅彦らとともに「新世紀音楽研究所」を旗揚げ。独自の音楽を作るために注力し、日本における前衛のさきがけとなった。
※ここらへんの状況は「日本フリージャズ史」(副島輝人著)に詳しい。

今回ご紹介するのは、金井英人クインテットにより1978年に録音された名盤
『アランフェス協奏曲』である。

※中古屋で探せば当然こんなに高くないので心配いりません。オリジナル盤じゃあるまいし。

これはもう圧倒的だ。
アランフェスの美しいメロディーをテナー2本でドラマチックに提示しつつ、不気味で荒々しいベースの重低音が後ろで鳴っている。
憎い演出だな、というのが第一印象だ。
サックス2本のうち、特に藤原幹典のアルトはすごい音を出している。
鳴りきったラバーのマウスピース独特の、柔らかくもピーキーな音だ。メタルじゃこうはいかないんだな。
藤原氏はこのとき若干20歳(!)。しかも楽器を始めて3年程度だったらしいが、にわかには信じ難い。10年以上楽器を吹いているこっちの立場がない。
尖った若手を集めて自由にやらせつつ統率し、「自分のアランフェス」を作り上げた金井氏は、ベーシストとしてだけでなくアレンジャーやバンドリーダーとしても非凡であったのだろう。

こういうジャズをやる人は最近いないな、売れないからかな、などとレコードを聴きながらひとりごちるのである。
(以上、敬称略)
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