2011年1月30日日曜日

スタン・ゲッツ最後のステージ/”People Time”

前回書いた高瀬アキの”Blue Monk”が録音されたのは1991年だが、同年にジャズテナーの巨匠最後の演奏が吹き込まれていた。




スタン・ゲッツである。






本作は1991年3月、ゲッツが癌で亡くなるちょうど3ヶ月前に録音されたライブ盤である。
ケニー・バロンのピアノとデュオで、全曲スタンダード。
理論的に難しいことは何もやっていないが、二人のソロは実にメロディアスだ。バロンの透き通ったピアノがとても心地よい。
テナー、ピアノともにアドリブの練習素材としても最適といえる。
だが、そんな話はここでは重要ではない。
本作において何よりも聴くべきは、ゲッツの音の凄まじさである

2011年1月25日火曜日

高瀬アキwithデヴィッド・マレイ/”Blue Monk”

前回ハミエット・ブルーイットについて書いたあと、同じロフトジャズ仲間のデヴィッド・マレイ(David Murray)を無性に聴きたくなって久しぶりに取り出したのがコレ。


ヨーロッパを中心に活動するピアニスト高瀬アキさんとのデュオという、少々珍しい編成だ。
マレイはテナーとバスクラリネットを吹く。

マレイは70年代ニューヨークのロフトジャズ・ムーヴメントで頭角を現したテナー奏者だ。
リーダーアルバムがやたらと多く、ワンホーンカルテットからビッグバンド、変なファンクまで守備範囲は広い。


「アルバート・アイラーを踏襲したスリリングなプレイ」(?)
などという、わかったようなわからないような謳い文句で日本でも紹介され話題となった。


たしかにアイラーのようなフリーフォームの奏法を多用するが、基本的スタイルは戦闘的な前衛ではなく、むしろコールマン・ホーキンスに根ざした新鋭正統派という印象が強い。


音はとにかく極太。

鉄芯が入ったようかんのような重さがあり、
(我ながらいい例えだなァ)
コシもある。

これにはベルグラーセンのマウスピースも一役買っていると思われる。

※ラーセンのマウスピースについてはまたの機会に。

2011年1月21日金曜日

ブルーイット・バリトンネイション/”Libation For The Baritone Saxophone Nation”

私がもっとも敬愛するバリトン奏者ハミエット・ブルーイット先生。



バリトンのワンホーン・カルテットでは飽足らず、バリトン4本+ドラムという
とてつもなくアホ
最高に刺激的なグループまで作ってしまった。

何故にこういうおもしろいことを思いつくのか。

2011年1月16日日曜日

コーン6Mのネック(アルトサックス)

ヴィンテージサックスが好きな方はよくご存知のことと思うが、コーン(C.G.CONN)製アルトのネックには『マイクロチューニングデバイス』なる物がついている(ないものもある)。

これは、ネックについているダイヤルを回してネック自体を伸縮させてチューニングするという、驚くべきシステムであった。
(結局この機構を使ったのはコーンだけだったが)



本題はここから。
これまでは、せっかくチューニングデバイスが付いているのに、マウスピースの抜き差しで対応していたが、ふと思い立って
目いっぱいマウスピースを突っ込んだ状態でデバイスをくるくる回してチューニングし、吹いてみた。

2011年1月13日木曜日

フィル・ウッズとジーン・クイル/Phil Talks With Quill

前回はテナーバトルについて書かせていただいたが、アルトのバトルモノでも負けず劣らず熱い演奏がある。


1957年録音。

バップの有名曲をアルト2本でこれでかとばかりに吹くわけだが、このころの二人は音が似通っているので、フレーズの手癖などをよく聴かないと、どっちがどっちだか
正直よくわからん。

2011年1月12日水曜日

ジョニー・グリフィンとエディ・ロックジョウ・デイビス/"Lookin’ At Monk"

前回ジョニー・グリフィンについて書いたばかりだが、我慢できなくなったので、本日はロックジョウ・デイビスとのツイン・テナーアルバムをご紹介。

1961年録音。
ハードバップ黄金期を過ぎた時代にあっても、まだ熱い音源はある!
この二人のバトルアルバムはリバーサイドやMPSなどからも出ているが、本作はタイトル通りモンクの曲だけを演奏したという点で異色だ。

モンクは変な曲を書くことで有名なおっさんだが、この二人の手にかかると、あら不思議。
イケイケテナーバトルに変わってしまう。

一聴してわかるほど両者のスタイルは違うが、どちらも野太く重量級の音圧だ。

2曲目”Well You Needn’t”のチェイスのようなアップテンポの曲が、2管決闘の図をもっとも満喫できる形だろう。
モンクの変な曲にイマイチ乗り切れていない風のロックジョウも「俺これが得意!」とばかりにグロウルし(笑)、タフテナーをアピール。

一転、名曲”Round Midnight”ではグリフィン一人であのテーマをじっくり吹く。
ここぞというコードチェンジで、ここぞという盛り上げ方。憎い・・・。


ベイシーが愛したワイルドテナーのロックジョウとハードバップの速射砲グリフィン。
こういう音源にこそ、古きよきテナーバトルの醍醐味がある。


Johnny Griffin(ts)
Eddie “Lockjaw” Davis(ts)
Junior Mance(p)
Larry Gales(b)
Ben Riley(ds)

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ジーン・アモンズのテナーバトル
ジョニー・グリフィン/Studio Jazz Party

2011年1月10日月曜日

ジョニー・グリフィン/Studio Jazz Party

俺が好きなハード・バップテナーの一人であるジョニー・グリフィン。

低音から高音域まですべてを存分に使った起伏に富むフレージングと、「豪快」と呼ぶに相応しいぶっとい音が魅力だ。

とはいえ、演奏スタイルはホンカーやブロウ・テナー族とは違い、拍に忠実である(ホンカーがメチャクチャやっていると言いたいわけではないが)。
突然「ギョエー」とフラジオをぶちかましたりはしない。

よって、バップフレーズの練習素材としても大変重宝するわけだ。

“Studio Jazz Party”


2011年1月8日土曜日

サヒブ・シハブ/“Sentiments”

近年やたらと再評価されているサヒブ・シハブ。

バリトンサックスが有名だが、アルト、ソプラノのほかにフルートも吹くマルチリード奏者だ。




ちなみにサヒブ・シハブというのは回教名(ムスリム)で、本名はエドモンド・グレゴリーという。
なんか普通過ぎるが・・・。













“Sentiments”

65年および71年の録音を収めたお得盤。
前半ではサヒブのソプラノ(!)がワンホーン・カルテットで聴けるのが珍しい。
後半はThe Danish Radio Jazz Group(デンマーク放送所属のバンド)によるアンサンブル。こっちではバリトンとフルート。

サヒブはマリガン信奉者だそうだが、なるほど、バリトンの音はペッパー・アダムスのようなブリブリ系ではなく、軽やかだ。

それとは対照的に、ソプラノはかなりバキバキした、芯のある音になっている。

表題曲“Sentiments”もソプラノで吹いているが、いきなりオルガンとエレキベースが入ってきて、いうなればインチキ臭いクラブジャズといった雰囲気である。このいい加減さがまたいい。

マイナーのファンキーチューン(3曲目)が出てきたかと思えば、サスペンス映画のBGMで流されそうな12曲目など、全体的にサヒブの曲は変なのが多い。

それがまた面白いんだが・・・。

ケニー・ドリューが参加していることからも、本作は今となっては貴重な記録だ。

☆次回をお楽しみに☆

2011年1月7日金曜日

追悼マリオン・ブラウン

2010年10月18日、マリオン・ブラウン逝く。

不覚にも最近まで知らなかった・・・。

←ESPから出たカルテットのレコード。
  見つけたら買っておこう。


60年代中盤、フリージャズが一気に台頭した時代に頭角を現した前衛派のアルトだが、わけのわからんノイズをただ撒き散らす如き演奏をすることはなかった。





失礼を承知で言わせていただくと、アルト奏者としてはヘタである。
綺麗で繊細な音を出すプレイヤーで、指もそんなに回らない。

太い音で押してくるような演奏が好きな俺としては「もうちょっと気合を入れんかオッサン!」と言いたくなるときもままあるのだが、淡々とした、しかし聴衆に媚びることのないフレーズを吹くマリオンが不思議と好きであった。
“Offering”

92年録音、コルトレーンに捧げるというテーマの作品。
スローな曲が多いので、丸くなったようで少々物足りなさも感じるが、ヘタクソでも印象的なフレーズ、シンプルかつ美しい音は60年代とあまり変わらなくていい。
ヴィーナス・レコードから出ているのは何か気に入らないが、
それは置いとこう。
5曲目”Golden Lady”はなんとなく雰囲気がエリック・サティ。
それもそのはず、マリオンはサティの研究に明け暮れていた時期があったのだ。

最後を飾るコルトレーンの名曲”After The Rain”では、牧歌的な風景が見えてくるような、純粋なアルトを聴くことができる。

ちなみに

コルトレーン世紀の問題作(?)”Ascension”では、うまいんだかヘタなんだかよくわからんソロを吹くマリオンを聴くことができる。


☆次回をお楽しみに☆

2011年1月5日水曜日

山下洋輔トリオ/キアズマ

平成23年になったものの、先の見えない状況が続く。 「草食系男子」などというクソの足しにもならない輩が増え、時代は閉塞感に満ちている。

こういう時にこそ、圧倒的なパワーで聴衆をねじ伏せる音楽が必要ではないのか。

75年ドイツでのライブ、山下洋輔トリオ第2黄金期の代表作である。

メンバーは山下洋輔(p)、森山威男(ds)、
そしてアルトサックスはもちろん坂田明


海外の著名プレイヤーに「山下洋輔トリオのあとに演奏するのは勘弁してくれ。」と言わしめた、ぶっちぎりに疾走する雷のようなサウンドだ。








2011年1月2日日曜日

イリノイ・ジャケー/"Jumpin’ at Apollo”

2011年一発目はお祭りテナーで行きたいと思う。

ホンカーといえばこの人は外せない。

アーネット・コブより少し前にホンカー族として名を馳せていたので元祖とも思えるが、ジャケーは「ホンキングはレスター・ヤングに習ったよ。」と言っていたらしく(本当かいな)、ホンカーの源流は未だに判然としない。

“Jumpin’ at Apollo”

1945年から47年までの録音が合計23曲も入っているお得音源。

フロント3ないし4管でドカドカとスウィングする。ひとことで言えば、これは
バカバンドである。

※「バカ」というのは敬意をこめた表現であるとご理解いただきたい。

これぞジャンプ・ブルースと呼ぶべき、底抜けの明るさ、ムサさ、そして漫画のような曲のエンディング。


ジャケーのテナーは

・グロウル奏法が基本
・ソロで困ったらとりあえずフラジオ

というホンカー要素満載。家で一人で聴いていても「いけぇ!」と思わず叫んでしまう。

メンバーもやたらと豪華だ(今から思えばだが)。

ベースはミンガス、バリトンはレオ・パーカー、ワイノニー・ハリスのシャウトにギターはフレディー・グリーン!

こういうのをお宝音源と呼ぶのだろう。

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レオ・パーカー/"Back To Back Baritones"