2011年6月21日火曜日

エリック・アレキサンダー&ヴィンセント・ハーリング/"The Battle"



米国バップシーンを牽引する二人のトップミュージシャン競演盤である。

ジーン・アモンズとスティットの演奏で有名な"Blues Up And Down"を持ってくるところなど、サックス・バトルのツボを押さえているなあ、という感じだ。

しかしまあ、エリック・アレキサンダーのというのは不思議なプレイヤーだ。
豪快なトーンですごいことを吹いているのに、静かに聴こえる。というか、熱さがあまり感じれない。
そのクールは雰囲気が人気の秘密でもあり、またイマイチと言われる部分でもあるのだろう。
それに対して、ヴィンセント・ハーリングのアルト、とにかく音が太い
キャノンボール・アダレイに強く影響を受けたであろう、「鳴りきったラバーのマッピの音」で吹きまくる。
テクニック偏重派ではなく、やたらと難しいことをやり過ぎない、ある意味泥臭いフレーズが熱い。

たしかに内容は現代のバップの最高峰といえるだろう。
各プレイヤーのソロは抜群にかっこよく、指折りの名手による最高の演奏だ。
練習素材としても申し分なし。「あんなフレーズが自在に吹けたら・・・。」とつくづく思う。
サックス奏者は買って聴くべきCDであることは間違いない。

だが、はっきり言えば、おもしろくない

生意気を承知で言うが、昔の音源を聴くのと同じだ。
バップとハード・バップ、過去の偉大な演奏の焼き直しである。
巨人の演奏を踏襲しつつ、それを壊すことをしなければ新しいものは生まれない。
これは、古今東西の文化に共通してあてはまることだ。
そして、「トップ・プレイヤーによるギリギリ感」がない。
上手すぎる。
ミストーンもないし、フレーズに詰まってしまったりすることもない。
我々が聴きたいのは、スター・プレイヤーの技量を持ってしてもコレが限界!というスリリングな演奏なのだ。
結局新譜を買わなくなってしまう理由がここにあるのだ・・・。

関連記事
ジョニー・グリフィンとエディ・ロックジョウ・デイビス/"Lookin’ At Monk"
フィル・ウッズとジーン・クイル/Phil Talks With Quill

0 件のコメント: