2010年11月13日土曜日

デクスター・ゴードン(Ts)/"Daddy Plays The Horn"

次第に肌寒くなるこの季節、仕事からの帰り道に”Autumn In New york”が無性に聴きたくなったりするわけである。

真っ先に浮かぶのは、デクスター・ゴードンのこの一枚。

"Daddy Plays The Horn"








これまたジャケットが秀逸だ。







40年代にレスター・ヤング流の柔らかいトーンとチャーリー・パーカーが完成させたバップのイディオムを融合させ、一気にスターダムの上り詰めた。
が、50年代はクスリをやりすぎて活動はままならず、塀の中で過ごすことも多かったらしい。
さらには、よき相棒であったワーデル・グレイ(ts)が55年に変死してしまう。

そんな中、ベツレヘム・レーベルによって55年に録音されたのが本作だ。

悲惨な時期から復活できたのか、カムバック作と呼ぶに相応しいすばらしい出来栄えになっている。

ちょっとマヌケで、しかし楽しいテーマが印象的な表題曲"Daddy Plays The Horn"に始まり、

5曲目に"Autumn In New york"。
これがとてつもなくグッとくるわけだ。
シナトラを筆頭に、数え切れない有名プレイヤーに演奏されてきたスタンダード。

音色は男性的逞しさを強く感じるが、力で押す雰囲気はまったくない、包み込むようなトーン。

さらに、デックスのソロはタイム感が独特なのだ。
一聴すると、遅れているようにも感じるのだが、決してそうではない。リズムの取り方が大きいということなのだろうか。
ソロ自体のフレーズは比較的単純なものが多いが、この独特のリズムも含めてコピーするのは非常に難しい。


ふくよかなトーンに、ゆったりとしたリズム感は、ジャズテナーのひとつの理想系といってもよいだろう。


デックスのアルバムには多くの名作が残されているが、中でも強くオススメしたい一枚だ。

■Musicians
Dexter Gordon (Ts)
Kenny Drew (P)
Leroy Vinneger (B)
Larry Marable (Ds)

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