次第に肌寒くなるこの季節、仕事からの帰り道に”Autumn In New york”が無性に聴きたくなったりするわけである。
真っ先に浮かぶのは、デクスター・ゴードンのこの一枚。
"Daddy Plays The Horn"
これまたジャケットが秀逸だ。
40年代にレスター・ヤング流の柔らかいトーンとチャーリー・パーカーが完成させたバップのイディオムを融合させ、一気にスターダムの上り詰めた。
が、50年代はクスリをやりすぎて活動はままならず、塀の中で過ごすことも多かったらしい。
さらには、よき相棒であったワーデル・グレイ(ts)が55年に変死してしまう。
そんな中、ベツレヘム・レーベルによって55年に録音されたのが本作だ。
悲惨な時期から復活できたのか、カムバック作と呼ぶに相応しいすばらしい出来栄えになっている。
ちょっとマヌケで、しかし楽しいテーマが印象的な表題曲"Daddy Plays The Horn"に始まり、
5曲目に"Autumn In New york"。
これがとてつもなくグッとくるわけだ。
シナトラを筆頭に、数え切れない有名プレイヤーに演奏されてきたスタンダード。
音色は男性的逞しさを強く感じるが、力で押す雰囲気はまったくない、包み込むようなトーン。
さらに、デックスのソロはタイム感が独特なのだ。
一聴すると、遅れているようにも感じるのだが、決してそうではない。リズムの取り方が大きいということなのだろうか。
ソロ自体のフレーズは比較的単純なものが多いが、この独特のリズムも含めてコピーするのは非常に難しい。
ふくよかなトーンに、ゆったりとしたリズム感は、ジャズテナーのひとつの理想系といってもよいだろう。
デックスのアルバムには多くの名作が残されているが、中でも強くオススメしたい一枚だ。
■Musicians
Dexter Gordon (Ts)
Kenny Drew (P)
Leroy Vinneger (B)
Larry Marable (Ds)
関連記事
ジーン・アモンズのテナーバトル
0 件のコメント:
コメントを投稿