久々に日本ジャズを紹介したいなと思ったが、その前に、私の大好きなあるマイナーレーベル
スリー・ブラインド・マイス
(Three Blind Mice、以下TBM)について書いておきたい。
このTBMは、熱狂的ジャズファンの藤井武先生が「日本のブルーノート」を目指して1970年に設立された。
私はTBMが設立された時代には生まれてもおらず、というか精子にすらなっていなかったわけで、「このレーベルは云々」と偉そうなことを言える立場には当然ない。
が、レコードから飛び出す音はとても魅力的で、何か書かずにはおれないのである。
話が脱線してしまった。
TBMは日本人ジャズミュージシャンを専門に扱い、発表の場がなかなか与えられない新進気鋭の若手にも録音の機会を与えるレーベルで、マイナーレーベルとしては異例の154タイトルを世に送り出した。
※ちなみに、”Three Blind Mice”(3匹のめくらねずみ)というのはマザーグースに登場する歌である。
農家のおばさんが包丁を持って3匹の盲目のねずみを追い掛け回して切り刻むという、すさまじくサイコな歌だが、宗教的マイノリティー(おそらく清教徒のことと思われる)への迫害を歌ったものらしい。
もしそうであるならば、旧世界の価値観とは違う新しいものを作るという意味で、マイナーなジャズを記録し紹介するレーベル名として相応しいと考えたのかもしれない。
峰厚介、今田勝、大友義雄、土岐英史、山本剛、辛島文雄、宮間利之とニューハード、鈴木勲、金井英人、高柳昌行、松本英彦、東京ユニオン…(順不同、敬称略)。
今から見ると、とんでもない面子ばかりだが、当時はまだ無名のミュージシャンもいて、藤井さんは自らライブハウスに足を運び、これはというプレイヤーを発掘していたという。
日本ジャズが大きく動いた時代に録音されたため前衛的な内容のものが多く、中古屋で見つけるたびに「どんな音がするのかな。」と、ワクワクした。
日本ジャズの躍進に多大な影響を与えたTBMだったが、時代の波には逆らえなかったのか、2006年に倒産してしまった。
残念極まる。
我々のようなジャズファンにとっては大変ありがたいレーベルだったが、日本ジャズというマイナーなジャンルの、それも先鋭的なアーティストを多く取り上げていたのであるから、こう言っては大変失礼だが、なかなか売れなかったことと思う。
←レコードにはブックレットもついていた。
中古屋で買ってこれが入っていると、何やら得した気分になる。
2007年にソニーミュージックから人気の25タイトルが高音質CDで限定再販された(何枚出されたのかわからないが、今はほとんど売れ切れになっている)。
レコード業界の弱肉強食っぷりが垣間見える気がする。
そんな経緯で、TBMのレコードやCDは中古市場以外では手に入らなくなってしまった。
TBMをネットや中古CDショップで見つけた貴方(貴女)!
逡巡することなく買うことをオススメします!
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