2011年5月28日土曜日

ハミエット・ブルーイット/"Dangerously Suite"

直訳すれば「危険な組曲」。
ハミエット・ブルーイットでこのタイトルとくれば、どんだけ前衛かと思いきや、



アフロ・アメリカン・パワー全開のブラック・ミュージックなのである。

フリーキー・トーン連射のフリージャズではなく、アフリカをバックグラウンドにした、「いわゆる黒人音楽」がこのアルバムの主題だ。



アイリーン・ダッチャーという女性ヴォーカルが唄う"Ballad Of  Eddie Jefferson"では、ヴォーカルに絡むバリトンサックスが、これまた実にいい。
 アフリカ語(すいません、どこの言葉かさっぱりわからんので・・・)と思しき謎の語りが入る曲まで出てくる。
5曲目"Blues For Atlanta Georgia"は古いスタイルのブルースだが、
珍しいアルト・クラリネットを吹く。
瑞々しいクラの音色は相変わらず素晴らしく、何しろ音程がいい(爆笑)。

さらに、バリトンを存分に吹きまくる"Doll Baby"もB.Bキングの時代を思わせるブルースだ。
最低音を使った、ちょっと笑ってしまうような泥臭いテーマが始まった瞬間、思わず「おおっ、かっけ~!」と叫んでしまう。
フリーキー・トーンも当然使うし、いわゆる「普通のジャズ」はほとんど演奏しないが、ブルーイットが最も得意とするのはブルースとバラッドなのだと、再確認させられる。
地味だが、アタリな一枚だ。
関連記事
ブルーイット・バリトンネイション/”Libation For The Baritone Saxophone Nation”
ハミエット・ブルーイット(バリトンサックス)
International Baritone saxophone Conspiracy

2011年5月19日木曜日

太田邦夫クインテット/"My Back Pages 俺たちの青春"

前回に引き続きしつこく日本ジャズをご紹介したい。

これは一部のマニアしか知らない、埋もれた名盤だと思う。
アマゾンでは取り扱いすらされていなかった(笑)。


当然小生も知らなかったのだが、ディランの"My Back Pages"というタイトルを見て即買いした。



中部地区を中心に活動していた若手、しかもメンバーは全員20代!

原石のような若手を発掘するのに重きを置いたスリー・ブラインド・マイスらしいレコードだ。



↑見よ!この野暮ったいが「わかるなぁ」というジャケットを!


メンバーは
太田邦夫(P)
高野正幹(Ts)
松浦克彦(Tp)
加藤雅史(Ba)
夏目純(Ds)
失礼は重々承知だが、正直全員知らなかった・・・。
だが、TBMが取り上げただけはある、グループのカラーを存分に打ち出した充実の内容だ。
何しろディラン"My Back Pages"を取り上げたことに拍手を送りたい。
スローな8ビートに載せて、テナーが淡々とメロディーを吹く。
ポップスの曲をインストで演る例は多いが、薄っぺらいフュージョンサウンドになってしまうことも多い。
この曲もそういった意味では、「ダサい」のだが、

魂が反応するあのメロディー

若さ剥き出しなソロ。
もうたまらん。全部許せてしまう。

↑ディランのモノホンはこれに収録。

この録音がなされたのは1976年。
35年前だ。
当時20代だったメンバーはもう還暦目前。
今またこのメンバーが揃って"My Back Pages"をやったなら、どんな演奏になるのだろう。

きっと熟成された音が聴けるにちがいない。

関連記事
今田勝/”ナウ!”(サックス:三森一郎)
武田和命さん(テナーサックス) ”Gentle November”
スリー・ブラインド・マイス・レコード

2011年5月8日日曜日

5,000Hit記念!森山威男カルテット/"Hush-a-Bye"(サックス:小田切一巳)

このブログもついに5,000ヒットを超えました。

いつもご覧いただき、ありがとうございます!

最近は僅かではありますがコメントもいただけるようになり、CDもちょこちょこ売れて嬉しい限りです。
趣味の範疇とはいえ、ブログをやっている側からするとこういった反応をいただけるのは本当に励みになるのです。
今後とも懲りずにお付き合いいただければと思います。

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さてさて、今回は森山威男カルテットの"Hush-a-Bye"である。

森山威男 (Ds)
小田切一巳 (Ts,Ss)
向井滋春 (Tb)
板橋文夫 (P)
望月英明 (B)




夜明けの空を飛ぶ飛行機の翼が美しいジャケットだ。

山下洋輔トリオ時代から変わらない森山さんのドラミング、ペダルをへし折ったという板橋文夫さんのピアノソロは凄まじい。

しかし、何をさておきこの盤で聴くべきは、
テナーサックス小田切一巳さんをフィーチャーした

"Hush-a-Bye"だ。


この演奏は、本当にすごい。

悲愴感が漂い、それでいて豪快な、独特のギザギザした音。
無駄な音は一切ないという印象であった。
マイナーの"Hush-a-Bye"に合うなあ、と思う。

他にこのテナーを表す言葉が見つからない。とにかく一度は聴くべき演奏だ。

小田切さんは1948年生まれ。
水橋孝グループなどを経て、このアルバムで一躍注目を集めたそうである。
しかし、結核に罹ってしまい1980年に31歳の若さで亡くなってしまった。
存命であれば、64歳になっていたはずである。
あの音はどうなっていたのだろうかと思わずにはいられない。
一度でいいからライブで生音を聴いてみたかった。

2011年5月6日金曜日

峰厚介クインテット/"ミネ"

久しぶりの日本ジャズである。

1970年(昭和45年)録音。
スリー・ブラインド・マイスの記念すべき第一弾
が、この"ミネ"だ。

←地面から峰さんの首が生えているという、何がなんだかわからないがなんとも凄まじいジャケット。
これでジャケ買いはなかなか厳しいものがある。

まるでダリかエッシャーの絵のようだ。










実は、私は最近まで峰さんがもともとアルト吹きであったことを知らなかった。
勝手にバキバキなアルトだろうと想像していたが、意外と(というのは大変失礼だが)
洗練された音色なのだ。

2011年5月3日火曜日

アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ/"A Night In Tunisia"

坂道のアポロンにアート・ブレイキーが頻繁に登場するもんだからまた聴きたくなり、引っ張り出してきたのがコレである。


ジャズ・メッセンジャーズ(以下、JMと言ふ)の名盤といえば、モーニンを頂点としてカフェ・ボヘミアやらバードランドでのライブ盤やら、説明不要の金字塔ばかりだが、今回ご紹介するのは言わば

「隠れ名盤」である。


メンバーは
Art Blakey (Ds)
Sam Dockery (P)
Jimmy De Brest (B)
Bill Hardman (Tp)
Johnny Griffin (Ts)
Jackie Mclean (As)

マクリーンとグリフィン以外は知らない人ばっかりだ。

そもそもマクリーンが在籍した時代のJMは、ホレス・シルヴァーが活躍した時代とベニー・ゴルソンらが在籍した有名な時代とに挟まれていて、ハード・バップファンの間でも若干影が薄いとされているらしい。


だが、本作でもJM独特の「これぞハードバップ」な雰囲気、疾走感は十分発揮されており、上記の有名な作品群にも決して劣らない。

こういう隠れた名作を探すのもジャズの醍醐味と思う。

1曲目"A Night In Tunisia"はブレイキーのための曲になっているが、聴き応え十分。
なにしろマクリーンのソロが珍しくリズムに8分をバチッとはめた「バップなソロ」になっていて、

「マクリーンてちゃんと吹けるじゃんか!」

と思わせられる(失礼な話だが笑)。

いい意味でも「フツーなソロ」なので、コピーしてみると結構おもしろいかもしれないが・・・、どうでしょう?


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坂道のアポロン
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ティナ・ブルックス/"Back To The Tracks"